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ウィキペディアの運営体制に見るCGMの将来性に関する考察

1.はじめに

 近年の情報通信技術の急速な進歩により、
個人がインターネット上の情報を手軽に閲覧・発信できるようになった。
その結果「Consumer Generated Media(CGM)」という新しい考え方が生まれた。
これは従来のマス・メディアが専門家による編集を施してから情報発信することで
一定の信頼性を保っていたのに対し、
消費者自身が専門家の編集を経ずにメディアを
作り上げることができるようになったことを意味する。
しかし、消費者が専門家の修正を介さずに発信する情報は信頼性にばらつきがあることが多い。
この問題に対し、CGMの信頼性を高める試みのひとつとして挙げられるのが
「インターネット上のサイトを用いた集団での編集作業」
である。
 本論ではその代表事例であるウィキペディア(Wikipedia)の運営体制を論じることにより、
ウィキペディアの信頼性を産む仕組みを把握し、CGMの将来性を考察する。 

2.先行研究

 先行研究としては「情報コンテンツの信頼性とその評価技術」(加藤義清 2006)が挙げられ得る。同論文の「信頼性の高い情報の発信を促す情報発信のプロセス」の中には「Wikipediaモデル」が挙げられている。ウィキペディアの情報発信プロセスにおける主要基準は項目に対するinter-est(「興味」と「利害」両方の意味を含む) であると説明している。ある項目について興味や利害を持つ人がそれを目にし、不正確であったり、自分の考えと合わなかったり、自分の利害と対立していると感じるときに、修正を行う動機付けとなるという。
 

3.ウィキペディアの運営体制

 ウィキペディアとは基本方針に賛同する者なら誰でも記事を投稿したり編集したりすることが出来るオンライン百科事典である。その基本方針によると、ウィキペディアは中立的な観点に基づいた百科事典を目指している。中立的な観点から記事を執筆するということは特定の観点からの意見を主張するかわりに、論争における様々な立場を公正に説明することである。もしそれが実現して、読者がウィキペディアの項目が特定の観点を押しつけるものではないと感じれば、読者の思考が自由なものとなり、ひいては知的な独立性を支持することになる、と言うわけである。
 こうしたウィキペディアの運営のため、ユーザーから選出された「管理者」が存在する。管理者は「信頼された実行者」という位置づけであり、発言力は一般の利用者と対等に扱われるが、ページを編集制限したり削除したりする権限を持つ。また、ウィキペディアの各項目には「本文」、「ノート」、「編集」、「履歴」のコマンドが用意されている。「ノート」で項目の内容について議論し、「編集」で本文を編集し、「履歴」で過去の編集履歴を確認することができる。ユーザー登録をしてログインしている状態で編集すれば履歴に署名を残すことができる。ユーザー登録をしなくても編集はできるが、その場合はIPアドレスが保存される。これにより、不適切な書き込みを続けるユーザーは編集できなくなる。また、本文に特定の記述をすると、その項目は「スタブ記事」として扱われる。スタブ記事とは「まだ成長していない項目」という意味である。ユーザーはスタブ記事を一覧する事により効率よく内容を充実させるための編集ができる。このような体制により、集団的な編集が成し遂げられている。

4.考察

 ウィキペディアとブリタニカ百科事典の比較を表にまとめた。ウィキメディア財団の理事の一人となっている、エリック・メーラー氏が言うように、ウィキペディアは「間違いを犯しにくくするのではなく間違いを直しやすくする」という哲学に基づいている。したがって現時点で全ての項目について信頼性を完全に保証しているわけではないが情報が間違っていた時の訂正は円滑に行われる仕組みになっている。一方でブリタニカ百科事典は数多くの著名な研究者が執筆に参加しており、長時間かけて非公開で編集された後に公開されるのでかなり信頼性が高い。しかしウィキペディアの創設者であるジミー・ウェールズはブリタニカに誤記が全くないと考えている人があまりにも多すぎるがブリタニカ百科事典にも多数の誤記がある事を指摘している。誤記が判明した場合、それを訂正する方法はその事を手紙やインターネットで伝えるか、次回の出版を待つしかない。つまり「間違いを犯しにくいが間違いを直しにくい」と言うことが出来る。このように、ウィキペディアとブリタニカ百科事典を比べると、必ずしもどちらか一方が確実に優れているとは言えず、それぞれに一長一短がある。
 今回はCGMの代表例としてウィキペディアを上げて論じてきたが、このウィキペディアとブリタニカ百科事典の事例のように、CGMは既存メディアに取って代わるのではなく、その短所を補う形で新たな価値を創造しながら今後も発展していくと思われる。

5.章立て

1.序論
 1.1 選んだ理由
 1.2 語句説明
  1.2.1 CGMとは
  1.2.2 ウィキとは
  1.2.3 ウィキペディアとは
 1.3 先行研究
2 ウィキペディアの運営体制
 2.1 ウィキペディアの歴史と展望
 2.2 基本方針
 2.3 方針の決定
 2.4 管理者権限
 2.5 編集の流れ
 2.6 著作権 
 2.7 ウィキマネー
 2.8 運営資金
3 ウィキペディアの信頼性について
 3.1 ウィキペディアにおける情報訂正の速さ
 3.2 ウィキペディアにおける信頼性のばらつき
 3.3 ブリタニカ百科事典の信頼性
4 考察

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