枝を伐って根を枯らすの最新の日記
翌朝は、からりと晴れた
翌朝は、からりと晴れた、まことに気持のよい秋晴れの天気だった。
赤とんぼが楽しげに飛び交うて、昨夜の恐怖なぞ、かけら一つのこさぬすがすがしさだった。広い台所で私は、出入りの商人達と何かひそひそと話しあっていた。当今とちがって、大正の時代には、立派な貸家も多く、商人は引越してくる家におしかけ、自分のお得意様を作るのに、米屋も酒屋も肉屋も、なんでも競争がはげしかった。「ソレッ!」とばかりに通帳をつくり、おしかけて来たもので、要領の好い商人なぞは、引越の手つだいなぞをするありさまであった。
この日台所にはそのような商人が一ぱい集っていた。
「ヘエ――」
「では又――お出でなさったんですか?」
「しばらく現われないで、よいあんばいだなんて申しておりましたが」
「ばあーさんですか」
これは父の声だ。
「いやですなア――」
「旦那は何もごぞんじなく引越していらっしたんですな?」
「この家は有名な化けもの屋敷ですよ」
私は書生の徳吉さんの傍で、じっと聞耳をたてていた。看護師の勤め先としてクリニックと病院どちらが良いか - 枝を伐って根を枯らす - mindia(マインディア)
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