iJapan戦略2015の履歴
2009年7月6日(麻生内閣)、政府IT戦略本部が発表。
2015年までに実現すべきデジタル社会の将来像と実現に向けた戦略を描いた。形の上では、「小泉構造改革をIT普及で支援する」という目標を持った「IT新改革戦略(2006年1月発表)」を引き継ぐという位置づけである。しかし、上記文書を引き継ぐ記述は少なく、かわって「国民主役のデジタル安心・活力社会」という目標を掲げている。ITによる構造改革という色彩は非常に薄い。
内容
三大重点分野として、
1、電子政府・電子自治体分野、
2、医療・健康分野
3、教育・人財分野
の3つが挙げられており、
そのうち、医療・健康分野では、
2015 年までに、医療改革を進める上で、少子高齢化、医師の不足・偏在等に起因する各種問題の解決に対し、デジタル技術・情報が大きく寄与し、医療の質の一層の向上が図られる。
具体的には、国民誰もが質の高い医療サービスを享受できるよう、国として
デジタル技術・情報の活用支援を進めることにより、地域の医師不足等の医療が直面する問題に対応する。また、国際的な議論の動向も踏まえつつ、①個人が医療機関等より電子的に健康情報を入手し、本人及び医療従事者等が活用することと、②匿名化された健康情報を疫学的に活用することから成る「日本版EHR(仮称)」を、実現する。
加えて、世界最速で少子高齢化が進んでいる我が国が、合理的な費用で世界最高水準の医療を提供し危機を克服する成功モデルを諸外国に紹介することによって、世界の医療サービス向上に貢献できる。
と、「日本版EHR」が掲げられている。
以下、日本版EHRの関連箇所を引用する。
将来ビジョン及び目標
地域の医師不足等の医療が直面する問題への対応
(3)医療機関におけるデジタル基盤の整備により、医療業務の効率化や医療従事者の過重労働軽減、経営改善等を図る。併せて、地域医療連携を実
現する。
(5)医療機関、介護事業者、保険者、地方自治体等の連携の下で、在宅医療を受ける患者や被介護者の地域特性に応じた健康管理を実現する。日本版EHR(仮称)の実現
(1)個人が医療機関等より入手・管理する健康情報を医療従事者等に提示することにより、医療過誤が減り、過去の診療内容に基づいた継続的な医
療を受け、不要な検査を回避できるようにするとともに、セカンドオピ
ニオン等の活用により、自らが受ける医療・健康サービスの選択を行え
るようにする。
(2)処方せんの電子交付(遠隔医療技術の活用により在宅医療を受ける患者に対する交付を含む。)及び調剤情報の電子化により、処方情報から調
剤情報への変更内容の患者及び医療機関に対するフィードバック等を
実現し、より安全かつ利便性の高い医療サービスを受けられるようにす
る。
(3)匿名化された健康情報を全国規模で集積し、疫学的に活用することにより、医療の質を向上させる。方策
地域の医師不足等の医療が直面する問題への対応
(1)遠隔医療に関する科学的根拠に基づくデータ(エビデンス)を蓄積し、安全性・有効性等に関するエビデンスがあると検証された遠隔医療技術
について、適切な導入及び適用範囲の拡大を図るとともに、診療報酬等
の適切な活用を行う。特に、患者と対面する医師を遠隔サポートする医
療機関へのインセンティブ付与の実現方策を検討する。
(3)適切な価格で医療機関等における情報処理環境の整備に資するASP・
SaaS 等を活用した電子カルテシステムや遠隔診療機器等の導入支援等
を行い、(方策)2.(1)、(2)の活用を含め、地域医療連携や健康管
理等のための医療機関等の間の情報連携の仕組みを整備する。
(4)医療従事者の業務負担の解消又は軽減に向けて、デジタル技術及び医療クラークの活用を含んだ業務プロセスの見直し(BPR)の内容を明確化
する。併せて、デジタル技術を理解・活用できる医療クラークの養成及
び必要な医療情報システムの標準化等を促進する。
(6)救急患者等の搬送先の選択及び医療機関での受入れの効率化・円滑化に資する連絡支援システム等を整備する。日本版EHR(仮称)の実現
(1)医療機関等における安全性が十分担保されることを前提に、レセプトオンライン化を契機に医療機関等で実現されるネットワーク接続環境等
を有効に活用し、医療機関等の間の安全・安心な情報連携の仕組みを確
立する。
(2)客観的な医療データ(検査結果、処方・調剤情報及び診断名)等を希望する個人へ提供する仕組みを確立するとともに、個人に提供された情報
を本人及び医療従事者が活用し、かつ本人が、誰が情報にアクセスした
かの履歴を確認できる仕組みを実現する。
(3)上記(2)を実現するための医療・介護分野に係るID基盤を、社会保障カード(仮称)構想の検討状況を踏まえ早期に構築する。
(4)健康情報の特殊性及び関係する個人情報保護制度の整備状況を踏まえ
つつ、以下の事項を円滑に行えるよう、必要な制度等の手当を行う。
① 医療機関から患者本人へのデジタル化された診療情報等の提供
② 健康情報を疫学的な統計情報として活用するための匿名化
(5)処方・調剤情報のデジタル化に必要な制度を確立し、処方せんの電子化及び医薬品データマスタ等標準の整備並びに維持を行う。
(6)個人に適した健康指導を行う等、個人の健康情報を活用した健康サービス産業群を創出するため、個人の健康情報の安全な収集及び取り扱い方
策の明確化等の環境整備を行う。
(7)レセプト情報・特定健診情報等データベースシステム(仮称)の分析・活用方策に関するルール及び仕組みを整備する。また、医療の質の向上
の観点から収集するデータの対象の拡大のための要件を明確化する。
読んで分かるとおり、2015年までに実現という以外、明確な工程表も数値目標も記載されなかった。
3大分野以外でEHRに寄与するかもしれない点としては、「産業・地域の活性化及び新産業の育成」として、「デジタル技術・情報の活用により、全産業の構造改革と地域再生を実現し、我が国の産業の国際競争力強化を目指して、ASP・SaaSの普及促進に向けた各種ガイドラインの策定」を行うことが掲げられている。
概要
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