新たな情報通信技術戦略の履歴
2010年5月11日(鳩山内閣)、IT戦略本部発表。
これまでのIT新改革戦略(小泉内閣)、iJapan戦略2015(麻生内閣)などを事実上引き継ぐ文書。ただし、「これらの戦略の成果を引き継ぐ」という記述は文書中に見つからない。おそらく、政権交代のためではないかと思う。「前政権の成果を引き継ぐ」という表現はしにくかったのだろう。
- ITにより「政府・提供者主導の社会から国民・消費者主導の社会への転換」を行うこと
- ITによる「利便性が高い電子行政を、無駄を省き効率的に実現」すること
- ITを「環境・エネルギー、医療・介護」などの分野に応用し、これらの分野に新市場を創出することで、経済成長をはかること
などの記述が見られ、非常に民主党色の強い文書となっている。また、これらについて、別途、「新たな情報通信技術戦略工程表」があり、それぞれに数値目標と期限を設定してある。
ほぼ同時期に総務省から発表された「光の道構想」は、この戦略のために必要という位置づけのようである。
内容
1、国民本位の電子行政
2、地域の絆の再生
3、新市場の創出と国際展開
の3つの柱があり、自民党時代のIT戦略と異なり、業界別、分野別の記載になっていない。
このうち、PHRに関連する記述が、「2、地域の絆の再生」の中に、「どこでもMY病院構想」としてEHRに関連する記述が、「シームレスな地域医療連携」として登場する。また、介護情報に関する話題が、「高齢者等に対する在宅医療・介護、見守り支援」として記載されている。
さらに、これらのシステムについては、「3、新市場の創出と国際展開」の中で、早期に市場に投入し、「国際標準の獲得・展開および輸出・投資の促進」することを目指すことが謳われている。
全国どこでも過去の診療情報に基づいた医療を受けられるとともに、個人が健康管理に取り組める環境を実現するため、国民が自らの医療・健康情報を電子的に管理・活用するための全国レベルの情報提供サービスを創出する。このため、第一段階として、個人が自らに対する調剤情報等を電子的に管理する仕組みを実現する。また、匿名化されたレセプト情報等を一元的なデータベースとして集約し、広く医療の標準化・効率化及びサービスの向上に活用可能とする仕組みを構築する。
どこでもMY病院構想
全国どこでも自らの医療・健康情報を電子的に管理・活用することを可能にする「どこでもMY病院」構想を実現することとし、遅くとも2013年までにその一部サービス(調剤情報管理等)を開始する。このため、2010年度中に、診療明細書及び調剤情報の電子化方策や、「どこでもMY病院」構想を実現する上での運営主体、診療情報・健康情報等の帰属・取扱い等について結論を得る。また、本構想の実現に当たり、救急医療体制の強化にも資するよう検討する
シームレスな地域医療連携
遅くとも2015年までに地域医療支援病院を中心とし、生活習慣病などを対象として、情報通信技術を活用した地域連携クリティカルパスや医療から介護まで健康に関わる施設間でのシームレスなデータ共用を可能にする体制を各地に構築するため、2010年度中に、具体的な方針を固める。また、医療情報システム等の普及と標準化の推進を行うとともに、死因究明に精通した医師が少ない中で、地域連携により死亡時画像診断(Ai)による死因究明を推進する。
さらに、医師不足地域等における患者の利便性を向上させるため、処方せんの電送交付をはじめ、遠隔医療の実施可能範囲の明確化及び遠隔医療に対する診療報酬等の適切な活用など、遠隔医療の普及方策を検討する。
高齢者等に対する在宅医療・介護、見守り支援
2012年の診療報酬・介護報酬の同時改定に向け医療・介護の連携の在り方について検討する際に、在宅における医療と介護で共有すべき情報の検討を2010年度中に開始し、具体的な情報連携の方法についても併せて検討を行う。また、独居老人の見守りシステムの普及を推進する。
さらに、自殺の背景に見られるうつ病等の方々への支援として情報通信技術の活用の在り方を検討する