マゾヒズム
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多くの医者はマゾヒストだと思う。苦痛を感じながら体力の限界まで働くことに、会館を感じているように見える。
連中と話すと、今月は当直は何回目だとか、連続何時間勤務だとか、昨日の夕ごはんは何時まで取れなかったとか、今日は午前外来が長引きすぎて昼ごはんが取れなかったとか、そういった武勇伝を聞かされるものである。戦時中の兵隊が、ひもじさに耐えるために、お国のためと自分に言い聞かせて自身を納得させていたように、医者も、そういった苦痛を、自分の仕事が神聖であるゆえと言い聞かせて納得させてきた。
いつしか、俺のほうが人よりも苦しんでいるという気持ちをエネルギー源にして働く修正ができている。
こういう気分で働くのは、あまり健全なこととはいえまい。
そういう話を官僚の友人にすると、中央官庁の官僚もそういうものだ、という。なるほど。連中の不遜は、そこに理由があったか。自身のくだらない仕事が国のためになっていると彼らが信じるのは、余程の苦痛があったからであろう。
厄介なのは、彼らや僕達が、不遜で人の言うことに耳を貸せなくなるということだけではない。マゾヒスト的なメンタリティで仕事をする人間は、自分だけが苦労するのは、やはり気に入らない、不愉快になってくるのだ。そういう人間は、他人にも同じ苦労を背負わせねば不公平だと、奇妙な正義感をもって、のんびり生きている人間を断罪したがるのだ。
育休や産休がほしい?当直はやりたくない?ふざけるな!俺がどれだけ苦労していると思っているんだ。そんなやつは辞めてしまえ!
医療崩壊があって、そういうメンタリティの問題がはっきりしてきた今でもそういう事を言う人達がいる。もう少し余裕を持って仕事しようよ。君たち、面倒くさいよ。
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