高田のあたりまえノート単語集
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自家製PHRの経験

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平成24年はじめから半年程度の期間、自家製のPHR、つまり、患者の日常の生活習慣のためのチェックリスト、兼、生活記録みたいなウェブアプリを作って、自分のみている患者たちに使ってもらっていた。当初は、この種のシステムでどの程度、生活の問題点をコントロールできるようになるものか色々心配していたのだが、この点に関しては非常にうまくいったように思う。やってみると、ウェブとかスマホ使えばかなりの細かさで生活の問題点を修正できることがわかってきた。

むしろ、問題は、細かすぎるところまで患者の生活を変えることができる、ということにあった。僕達医者は、これまで、そこまで詳細に、家庭での生活に介入したことがないし、また、そこまでの細かい生活介入を正当化できるほど「健康的な生活」に関する知識に自信を持っていないのだ。

医者や医学が、「健康的な生活」について、細かいところまで自信を持って知っているわけではない、というのは意外に感じられるかもしれない。その理由は、医学の研究方法にある。

多くの分野の科学のように、なんらかの理論を使って演繹的に推定する、ということは、医学では余り行われない。医学の対象である人体というのは、あまりに複雑で、また個体差がある。だから、演繹的な理論で、どのような生活をしたら身体にどのような影響が出てくるか、ということを推測することは非常に難しいのだ。

代わりに、医学では、同じ条件で観察した多数の患者のデータを集め、統計的に有意な違いが現れるかを検討し、その結果を記録しておくわけだ。

問題は、この種の統計では、人体への影響がかなり大きなものでなくては観察できないことだ。

例えば、の手術を受けたかどうか、といったような大きな事象による人体の影響は、かなり正確に認識できるのだが、ちょっとした小さな生活習慣の違い(例えば、毎日の食事のメニューに一品追加するかどうか、といったような)による人体への影響は、余程の大規模の観察を長期に行わなければ、統計的にはほとんど検出できない。

つまり、この種の統計に頼った研究方法は、患者の生活に関しては「解像度」が低いのだ。

この種の知識だけをバックにして、スマートフォンのアプリを使って、患者の生活に(医者自身も介入の結果をよく理解できないような)細かい介入をする、というのは、ちょっと政党とは言いがたい気がする。

そういう訳で、このPHRの運用は止めてしまった。

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