SF恋愛小説「株式家庭ムラカミ」
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草案第2話「就家活動」

大学時代、僕は「マクロ家庭学部」に所属していた。
2000年代に存在していた「経済学部」と「経営学部」は
今では一部の短大にしか存在せず、
その代わり「マクロ家庭学部」と「ミクロ家庭学部」ができた。

「マクロ家庭学」とは
地球上の人類全てを1つの家庭として捉え、
いかに全ての人類が愛に満ち溢れた生活ができるかを研究する学問だ。

一見すると新しい学問のように思えるが、
実は過去の膨大な経済学の研究結果に対して
「生産」と「消費」の位置づけを逆転させるだけで
ほとんどそのまま応用できる。

僕の卒業研究テーマは「国富論のマクロ家庭学に対する応用」だ。

1776年に「アダム・スミス」という人が「国富論」
という本を出した。内容を箇条書きすると

(1)富の源は生産を行う労働力である
(2)分業により生産効率が上がる
(3)利己心による自由競争は、「生産と消費」を過不足のない状態へと自動的に導く(これを「神の見えざる手」という)

といった感じだ。
これを家庭学に応用すると

(1)富の源は消費を行う消費力である
(2)分業により消費効率が上がる
(3)利己心による自由競争は、「消費と生産」を過不足のない状態へと自動的に導く(これを「神の見えざる手」という)

といった感じになる。


大学3年生の終わりごろ、
就家活動の時期になった。

マクロ家庭学を学んでいたこともあり、
「大きな家庭で大規模な消費を行いたい」
とは漠然と思っていたが特に入りたい家庭はなかった。

そこでリクナビで様々な家庭にエントリーして
説明会に参加した。

「消費追求を優先する家庭」
「社会貢献を優先する家庭」
「研究色の強い家庭」

様々な家庭が存在した。

最終的に入家を決めたが
「株式家庭ニシムラ」という
1000人規模の家庭だ。

この家庭は
夫婦と子供2人の4人家族であった「西村宅」
が規模拡大のために株式化したものだ。

独立系ベンチャー家庭だが、
成長率がすごい。

3000年に当時最年少上場を果たした
上場家庭だ。

グループ子家庭も多数存在する。

家庭長が書いた

「渋谷で消費する家庭長の告白」

という本を読んで感動し、入家を決めた。







次回第3話「入家」に続く

 

草案第1話「株式家庭」

僕の名前は村上健太。
2982年生まれの26歳。
新卒で「株式家庭ニシムラ」という家庭に入ってから
かれこれ3年が経つ。

昔の人は「株式会社」なんてものを作ってみんなで生産活動していたらしい。
1人や2人じゃ本格的な生産活動なんてできなかったんだ。

だけど、今ではあらゆるコストが削減されて
その気にさえなれば
どんな生産活動もできる。

食べるものはもちろん、服だろうが家だろうが、
コンピュータの指示に従えば
どんなものでも簡単に出来上がってしまう。

株式会社なんてものはもう必要ないんだ。

一方で、「円満な家庭を作ること」というのは
どれだけ技術が進歩しても難しい。
いや、むしろ技術が進歩すればするほど難しくなっている気がする。

2602年。
「最高に円満な家庭を作りたい」と思うオランダ人達がお金を出し合い、
そのお金で「東インド家庭」というものを設立した。
これが世界初の「株式家庭」というものだ。

これが大成功して
株式家庭が次々と出現した。
未だに普通の家庭もあるけど、
ほとんどの家庭が株式方式をとっている。

完全にピラミッド型になっていて
家庭員は家庭部長に従い、
家庭部長は家庭長に従う。
家庭長は株主に従うといった感じだ。

今ではほとんどの学生が
何の迷いもなく株式家庭に就家する。

僕もその中の1人だ。







次回第2話「就家活動」に続く。

 

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