高田のあたりまえノート単語集
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イクナートンの履歴

エジプト第18王朝のファラオ、アメンホテプ4世のこと。

アメンホテプ4世は、宗教改革を中心とした社会改革(アマルナ革命)を行った。

この宗教改革が、世界史上、おそらくはじめての一神教の導入であったこと、彼の導入した新宗教が、後世のユダヤ教キリスト教、イスラム教などに強い影響を与えていると考えられていることなどから、このファラオに対しては欧米キリスト教国で関心が高い。

アメンホテプ4世は造物主であるアトンを信仰し、みずからイクナートン(「アトンに愛されるもの」の意味とされる)と名乗り、新しい首都アマルナを建設した。さまざまな社会改革を行ったが、性急な社会改革は反発を呼び、イクナートンの死後、アトン信仰は放棄され、彼の建設した都市、アマルナも放棄された。

なお、旧約聖書にあるモーセによる出エジプトは、もし史実とすれば、このイクナートンの死のすぐ後であったと考えられている(イクナートンの死後の混乱期に、エジプト18王朝はパレスチナの領土を放棄している)。

フロイトは、「モーセと一神教」の中で、
1,イクナートンは、当時、パレスチナを支配しており、また、イクナートンのアマルナの建設は、外国からの捕虜を主な労働力として行われたことから、相当数のヘブライ人が、この建設に奴隷として関わっていた可能性が高いこと。
2,後にユダヤ教宗教的な戒律として定着する割礼は、18王朝時代のエジプト貴族の間で一般的な習慣であったこと。
3,旧約聖書には、出エジプト当時のヘブライ人たちが、偶像を作って拝む様子が描かれており、当時のヘブライ人たちに一神教が定着していたとは考えにくいこと。
3,モーセという名前が当時のエジプト人に多いコモンネームであり、また、旧約聖書に、彼がエジプトの王族に育てられたとの記述があることから、モーセは富裕なエジプト人であった可能性が高い事。
4,イクナートンの時代、パレスチナはエジプト領であったが、イクナートンの死後、エジプトの政治的混乱に伴い、パレスチナは支配者を失い、軍事的、政治的な空白地になっていた可能性が高い事。

などから、モーセは、イクナートンに従うアマルナ建設に携わったエジプト人官僚であり、アマルナ革命の失敗後、自身が指揮していたヘブライ人たちを率いて、支配者がいなくなっていたパレスチナに亡命しようとしたものとみなしており、その際にイクナートンの信奉者であったモーセによってその時点までは多神教の信者出会ったヘブライ人に押し付けられたのが、一神教であるユダヤ教の原型であろうと考えている。

なお、フロイトによると、ヘブライ語のアドナイ(神様のこと、新共同訳聖書では、「主」と訳される)の語源は、アトンであろうという。