スマイルを超えた笑顔
テーマ「感情労働の世界に生きるーーースマイルを超えた笑顔」
楽しいことは生産性を高める。 笑顔は幸せのバロメーター。 お客様の心が開けばサイフも開く。 自分の幸せの為にいい仕事をしよう。 いい仕事とは、たくさんの笑顔を集めよう。・・・ 最近、30年かけてやっと「笑顔が儲かる」と言い切ることができるようになった。でも、これは商人の話。
日本の社会は依然として士農工商の縦割りの組織が現存する。士である官僚や農家など税金や制度で守られている社会は笑いはあっても笑顔で挨拶は苦手である。いまでも偉い人は、挨拶は部下や目下がするのだと思っている。本来、偉い人ほど部下を笑顔にしなければいけない。世界の優秀な経営者の写真は、例外無く最高の笑顔が溢れてくる。 そして経営者に可愛がられているサルの調教師のような接遇講師もいる。ポジションパワーで笑顔は作れないのに「仕事だから笑顔つくりなさい」と指導。笑った目が怖い。
武士は喰わねど高楊枝・・・むかし笑顔アメニティ研究所の設立当時は、笑顔が儲かるなど不謹慎だと叱られたことが懐かしい。お客様から喜ばれた通信簿がお金といっても、お金には汚いイメージがあるようだ。石原大臣の「最後はお金でしょ」発言の大ブーイングは象徴的だ。 だからこそ、日本にスマイルを超えた笑顔の文化を広げたい。しかし、日本語にはラフとスマイルのような笑いと笑顔の区別がつかない。笑顔観こそ日本人らしさとは何かを知る切り口になる。そして笑顔から日本文化を変えたい。成功のキーワードは感情労働の世界で生きることだ。
労働というと大きく3つに大別される。
一つ目は肉体労働だ。額に汗して「えんやこ~ら」誰でもひたむきに努力する人を応援したくなる。日本人は「頑張ろう」「頑張ってね」という言葉が大好きだ。みんなで応援しているから頑張ってね。忍耐にこそ美学であるという武士道、ひたむきに努力を重ね・・・感情を抑える、喜怒哀楽を見せないネガティブ世界だ。我慢は祭りで発散。「セイヤ、セイヤ・・・」お祭りは非現実のポジティブ世界へ導く、そして大笑いしてすっきり気分。 自然の四季にも恵まれている。大雪で生活が脅かされても、寒い寒い冬が来ても我慢すれば必ず春がやってくる。みんなでお花見を楽しむ。ちなみに「頑張る」という単語は他国には無いそうだ。英語でも訳せない。近い言葉では、「リラックス、エンジョイ...」日本語と伝わる意味が違ってくる。
二つ目は、知的労働だ。士農工商縦割りの組織は未だに健在。「組織の良さは、命令・実行・報告のスピードに比例する」このマネージメント方式は、安心安全が前面に出る企業やマニュアル型の組織には適している、減点方式で評価される場合が多い。学生時代から偏差値で評価され続けている日本人には素直に受け入れやすい。慣れてくると自己主張の無い依存型のイエスマン組織が誕生する。 日本人は個人より集団行動や世間を大切にしてきたからだ。「心は形を求め 形はこころをすすめる」正しい形にこそ正しい心が芽生える。日本の挨拶やお作法は、今でも家元制度がある。心がこもらない労働と言う言葉も嫌う人が多い。仕事で心を磨くのだ。心を形で評価する躾社会だ。
三つ目は感情労働だ。小さいときから笑顔が大事と教わりながら、「自分の笑顔に自信がある人」と質問しても、ほとんど手が上がらないのは日本人だけである。「人間は感情の動物だ」と言いながら自己表現が苦手である。他人を気にしすぎる村意識がいまなお顕在する。日本人は、個性を受け入れるのが苦手である。感情や好みの世界は一人ひとり違うのだ。みんな一緒が大好き。新入社員や販売員研修で笑顔が大切だと繰り返し指導されても、現場の先輩ほど笑顔で挨拶ができない。
士農工商の士、いまの官僚や政治家、先生と呼ばれる人や企業の管理職ほど笑顔がない。 日本の笑顔は笑い顔。サルの世界では笑うとは、強いものに対して服従するときのしぐさ、服従の笑いである。日本の笑いはサルの笑いに近いかもしれない。他国のサービス業は、チップの収入が給料の半分を構成する。人の上に立つ人ほど、現場を部下や現場を笑顔にするのはあたり前だ。ジョークの一つも言えない管理職は存在しないのだ。 縦割り組織の象徴的な言葉が「お客様は神様」。日本では出世すれば神に近づけるのか。偉い人とはどんな人なのか。愛され親しまれ信頼されるとはどういうことなのか、今一度考えてみる必要がある。
日本人の素晴らしい感情労働の世界を見事に演出し、苦手な笑顔を最大の長所として生まれ変わらせた成功事例がある。東京オリンピック2020年の誘致成功の感動ドラマだ。残念なことに日本人が考えたことではないが、イギリス人コンサルタント ニック・バレーが、すべての台詞や声の大きさや感情表現、振り付けから演技指導まで緻密に指導した。(安倍総理と皇族だけは含まれない) 結果、東京オリンピックを誘致することに成功した笑顔の手法に学ぼう。
「お・も・て・な・し」という言葉も昨年度の流行語大賞にもなった。滝川クリステルさんの「お・も・て・な・し」ばかりが注目されたが、注目すべきは世界各国の評議員に伝わる国際型のコミュニケーションを行っていた点だ。 東京開催の意義を熱く語るプレゼンテーターの皆さんの堅苦しくないリラックスした笑顔、はっきりした表情、大きなアクションとハイテンション。普段はそんな素振りもない猪瀬さんまでテンションをあげ笑顔が印象的でした。
最も貢献したのは、はじめに登場したパラリンピック陸上選手、足の不自由な佐藤真海さんの輝くような笑顔が評議員の心を鷲掴みにしたと思う。 シャイな日本人だからこそ、スマイルを超えた笑顔を世界に発信し、いままで苦手だった感情労働の世界でこそ日本人らしさが生きる。笑顔を作ることが恥ずかしいのではなく、笑顔ができないことが恥ずかしいのだ。
https://www.youtube.com/watch?v=LzvcxIJ6_ss
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