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主観医学

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比較的近い未来、医学がどのように変わっていくかという点に関して、僕の考えを表現した言葉。

現代、医学医療に起こっているトレンドの重要な部分は、「医学が主観的になっている」という言葉で表せると思う。

医学が主観的になってきている背景

疾病構造の変化

かつて、病気の多くは感染症であったが、現在では、「生活習慣病」と呼ばれる病気が、人々が健康に対する最大の脅威になりつつある。
この種の疾患は、一度罹患すると(生活習慣の改善がなされない限り)完全に治癒することは見込めない。

ところが、この生活習慣改善(たとえば、禁煙やダイエットなど)は実行が難しく、そのため、医療現場では、こういった生活習慣の改善のために役に立つライフハック的なアドバイスが求められることが増えている。また、これらのアドバイスをするために必要な情報は、病院で行う臨床検査から得られることは少なく、代わって、患者の日常生活に関する記録から必要な情報が得られることが増えている。

新薬の減少

新しい薬を作ることが急速に困難になりつつあること。

医薬品業界の2010年問題にあるように、新しい薬を作るという方向の技術革新は、頭打ちになりつつある。

現に、Twitter医療クラスタを見ると、いろいろな専門分野の医師が、「もう、自分の分野で新しい薬は必要ない。既存の薬をより安価にしてくれて、必要な患者に必要なタイミングで提供できれば、自分の分野の問題の多くは解決する」
という趣旨の発言をしているのを見ることができる。
こういう意見には異論もある人もいるだろうが、多くの医学分野では、多くの医師が、新しい薬よりも、既存の薬の新しい使い方を追求する方向に変わりつつあるように見える。

このトレンドは、製薬会社の立場からすると、特許料収入重視から価格競争力重視へ経営のポイントを変化させることになる。また、投資の方向も研究開発への投資から、新興国への工場移転のための投資へと大きくシフトさせることになる。

医師にとっては、新しい薬の知識を覚えることよりも、病気に関する知識を一般に広め、また、必要なタイミングで受診してもらえるように啓発していくことや、必要な薬をきちんと内服してくれるように患者に丁寧に説明することのほうが、より重要になりつつある。

インターネットと検索の普及

生活改善のための情報や、医療機関を選ぶための情報を、インターネット検索で探す人が増えたこと。

主観医学に向かうトレンド

医学に必要な知識の主観化

医療に必要とされる知識の中心が、客観的な知識(たとえば、物理学や化学に範をとった近代的生物学)から主観的な知識(たとえば、ライフハック的な心理学や、説得やプレゼンテーションのためのノウハウ)にシフトしていること。

これは、疾病構造の変化のため、医師が生活習慣の改善のためのアドバイスを求められることなどが増えたこと、また、新しい薬物の開発などが限界に達した結果、医師にとって、新しい生物学の知識を持っていることが技術面での差別化につながりにくくなってきていることが理由だと思う。

医学データの主観化

医療に必要なデータが、様々な客観的な検査データから得られるよりも、主観的な患者個人の生活の記録から得られることが多くなりつつある。(正直、患者にブログでも書いてもらうほうが、医者がカルテを記載するよりも医療のために重要な記録ができるんじゃないかと思うことがある)

これは、病院で行う臨床検査よりも、日常生活の記録の方が生活習慣の改善には重要な役割をはたすことなどが理由である。

現在、診療情報を医療機関が管理するのではなく、(たとえば、専用のポータルサイトなどを使って)患者個人が管理するシステム(PHR)の必要性が叫ばれているが、医学データの主観化は、この流れを加速することになると思われる。

医療機関評価の主観化

医療機関に対してなされる評価のうちで、施設ごとの治療成績や病院評価などの数字によるものよりも、患者が書いたブログやネット闘病記など、患者の主観的な経験を集めることによってなされるもののほうが重要になってきていると感じている。

このことは、後者のほうがインターネットの検索などに親和性が高いこと、また、病院に求められるサービスの内容が、手術や薬物投与などから、様々な生活に関するアドバイスや病状に関する分かり易い説明など、客観的な評価が困難なサービスに変わってきていることが原因と思われる。

注意すべきこと

誤解ないでほしいのだが、「医学が科学的でなくなる」と言っているわけではない。医学の中で、主観的な知識、主観的なデータ、主観的な施設評価などが大きなウエイトを占めるようになるというだけで、医学が科学的でなくなるというわけではない。

*主観医学のためのインフラ

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