伝統医学
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近代科学成立以前からある治療方法の総称。インド、中国、日本、アラビアなど、それぞれの文化圏に、別々の治療法の体系がある。
有効性
有効化どうか、きちんと科学的に確認されていないものが多い。ただし、これは、「有効でない」ということではない。
実のところ、有効化どうかは、制度上の理由で確かめにくいケースも多いのである。これについては「新しい夢の医学よりも古い医学の検証にこそ、公的な支出をして欲しい 」という文章を書いたことがある。
特徴
多くの伝統医学の技術体系、例えば漢方などは、現在医学とは、以下のような点で大きく異なっている。
- 高度な検査機器を必要としない。
- 主観的な自覚症状を重視する。そのため、治療には複雑で時間のかかる問診が必要になる。
- 高度な治療機器を必要としない。
- 現代医学に比較して、失敗したときのリスクの高い処置などが少ない。
- 現代医学に比較して、作用が弱い(副作用も弱い)薬物が多い。(しばしば誤解されるが、「副作用がない」わけではない)
- 生活の中で守るべきルールが複雑であることが多い。
有効であっても、現代社会ではメリットを生かしにくい
多くの伝統医学の療法を古典の教科書通りに実践しようとすると、煩瑣で時間のかかる問診が必要となる。そのため、たとえ伝統医学の治療法自体は有効な場合でも、現在の多忙な病院では、有効性を発揮しにくいケースもあるように思う。
おそらく、これらの煩瑣な問診項目のすべてを医師が行うことも、煩瑣な生活の注意点をすべて患者に説明することも、かつて、医療保険制度が導入される以前、患者数が少なく、富裕層に限られていた時代には、十分に現実的だったのだろうと思われる。
失敗した時のリスクが高い処置や、誤って処方されたときに大きな問題になる薬が少ないことは、おそらく、医師免許制度が確立する以前には、その技術体系が受け入れられるためには、重要なことだったのだろう。
また、これらの伝統医学の療法の多くは、状況によっては、専門家を呼ばず、自宅で実行することも可能である。自宅で守るべき指針が煩瑣なくらいに精緻に作られているし(これは、こういうケースではむしろメリットである)、高度な検査機器や治療機器を必要としないためである。
医療保険制度が医療のための財源を提供し、医科大学や大学医学部が人材を提供し、国家が、医師免許を与えることで医師の最小限の能力を保証するシステムが確立している20世紀は、これらの伝統医学にとって、そのメリットを生かしにくい社会だったように思える。
僕は、おそらく、中医学や漢方の技術の多くは、その時代の医療の置かれた状況にあわせて作られた、その時代の医療のビジネスモデルに最適な(当時の)技術を集めたものだったのだろうと考えている。現代医学の目で漢方の古典を読むと首をかしげたくなる記述もあるのだけれど、一見非科学的に見えるものでも、そのように考えると納得出来ることがしばしばあるからである。
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