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新薬開発

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これは、過去に書いたブログのエントリの転載です。

「新薬の作られない世界」2009年8月

最近、新しい薬が、だんだん作られなくなっている。
まれに新薬の話がでても、たいていは特殊な体質の人にしか使えないとか、マイナーな疾患にしか効かないとかで、あんまり、開発しても製薬会社に「うまみ」がありそうには思えないものが多い。おそらく、マーケットの大きい、うまみのある薬の多くはすでに開発され尽くしているんだろうと思う。
人間の体に影響を与える多くの薬物は、抗生物質の類を例外とすれば、そのかなりの部分が細胞膜上のレセプターをはじめとする人間の体を構成するたんぱく質に結合するという方法で効果を及ぼすわけで、また、その、人体のたんぱく質の種類っていうのは有限なわけだから、だから、そもそも科学的に合成しうる薬物の薬効の種類自体、有限なのかもしれない。
数年前、ある大手製薬会社の経営トップが、近所の大学に講演にきて、そのときに、「新しい薬を開発するっていうのは、新大陸を発見するようなロマンのある仕事だ」って、学生相手にアジテーションしていた。
たぶん、彼は、彼を演者として呼んだ大学との関係もあって、そういわざるを得ない立場だったんだろうけれども、でも、そのとき、彼の率いる製薬会社は新しい薬の特許料で儲けるというビジネスを放棄して、その代わり、既存の薬を他社よりも安価に作れる会社として生まれ変わろうとしていた。
そのために、新薬開発の規模縮小を着々と実行していて、その一方で、途上国に大規模な生産拠点を作る計画を立てていた。
彼の会社は、リストラの一環として、大学の研究室に寄付もしていた。
意味がわからない?
自社の研究所の使えない研究者をクビにすると角が立つから、クビにする代わりに、大学に任期つきの教員として雇ってもらうのだ。その代わり、会社は、研究室に、いくばくかの寄付をする。企業から見ると、若干の寄付で、サラリーマン研究員の解雇に伴うトラブルを避けることができる。
リストラされる本人から見ても、見た目の上では、企業の一介の研究員から有名大学の准教授への栄転だ。ただし、数年後には安定したサラリーマンの給与を失う条件付なんだけれど。
あの製薬会社のトップの講演も、そういう、人員整理に協力する大学のためのリップサービスとして行われたものだったと思う。
ここ数十年で、新しい薬品開発するために必要なコストって言うのはだんだん高くなってきて、さらに、新薬開発の成功率も下がってきていて、しかも、新しく作られた薬の市場は、どれもこれも非常に小さい。
だから、多くの製薬会社は、その会社と同じように、新薬開発をあきらめ、価格競争に活路を見出そうとする。
僕は、新薬が開発されなくなる時代っていうのは、非常に近いとおもっている。
あの製薬会社社長の言った、「新薬開発は新大陸発見」というのは、実のところ、非常に正しいアナロジーだったのかもしれないと思う。
16世紀、新しい陸地を「発見」することは、ヨーロッパ諸国に莫大な利益をもたらした。けれども、地球は有限である。新しい陸地、少なくとも、ある程度のうまみのある大きな陸地は、ほんの数十年の間に発見され尽くしたのだ。
一切、新薬が作られなくなるとしたら、医療の世界はどうなるだろう?
無論、新薬が作られなくなることは、医学の進歩がなくなることを意味するわけではない。
既存の薬の組み合わせについて考えたり、栄養のとり方や運動、ぼくが専門にしている内科的な分野だけでも、まだまだ発展の余地は大きい。
でも、新薬が作られ続けている世界とそうでない世界では、おそらく、医療分野の、特に経済の目で見た景色は大きく違って見えるだろうと思う。
たぶん、それは、僕たちが、もうすぐ生きることになる世界だろうと思う。

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