それぞれの社会に最適な医学の履歴
医学ってのは、「科学」というよりも、疾患の治療や予防という明確な目的をもった「技術」の集合だと思う。
時々、漢方薬などを処方していると、東洋の伝統医学と西洋の現代医学はどっちの方が優れているか、なんて聞かれることがある。そういうとき、僕は、
「病気によるけれど、多くの病気では圧倒的に西洋医学の方が優れていると思う」
と答えている。
ただし、これは、現在の社会状況や医療のビジネスモデルを前提とするならば、だとも思う。
多くの技術分野と同様、医学分野でも、同じ問題を解決しようとしていても、最適な技術がビジネスモデルや社会制度によって大きく変わってしまうことがある。
僕は、中医学や漢方は、ある時代の社会制度やその時代の医療のビジネスモデルに最適な技術を集めた技術体系だったと考えている。現代医学の目で漢方の古典を読むと首をかしげたくなる記述もあるのだけれど、そのように考えると納得出来ることがしばしばあるからである。
また、比較的近い未来の社会に適した医学について、「主観医学」とか、「ニュース配信のような医療」みたいな言葉で考えている。