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すいめいの情報

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すぐ腰障子 を開ける音がした。宗助はその音を聞き送って、たった一人|火鉢 の前に坐って、灰になる炭の色を眺 めていた。彼の頭には明日 の日の丸が映った。外を乗り回す人の絹帽子 の光が見えた。洋剣 の音だの、馬の嘶 だの、遣羽子 の声が聞えた。彼は今から数時間の後 また年中行事のうちで、もっとも人の心を新にすべく仕組まれた景物に出逢わなければならなかった。
 陽気そうに見えるもの、賑 かそうに見えるものが、幾組となく彼の心の前を通り過ぎたが、その中で彼の臂 を把 って、いっしょに引張って行こうとするものは一つもなかった。彼はただ饗宴 に招かれない局外者として、酔う事を禁じられたごとくに、また酔う事を免 かれた人であった。彼は自分と御米の生命 を、毎年平凡な波瀾 のうちに送る以上に、面前 大した希望も持っていなかった。こうして忙がしい大晦日に、一人家を守る静かさが、ちょうど彼の平生の現実を代表していた。
 御米は十時過に帰って来た。いつもより光沢 の好い頬を灯 に照らして、湯の温 のまだ抜けない襟 を少し開けるように襦袢 を重ねていた。長い襟首がよく見えた。
「どうも込んで込んで、洗う事も桶 を取る事もできないくらいなの」と始めて緩 くり息を吐 いた。
 清の帰ったのは十一時過であった。これも綺麗 な頭を障子から出して、ただ今、どうも遅くなりましたと挨拶 をしたついでに、あれから二人とか三人とか待ち合したと云う話をした。

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