トヨタ生産方式の履歴
日本が世界に誇る経営手法(マネジメント手法)。元トヨタ自動車工業副社長 大野耐一氏(1912-1990)が1978年に同名の著書を出した。30年以上に渡り読み継がれている。
トヨタ生産方式―脱規模の経営をめざして
2010年のリコール問題
2010年のハイブリッド車のリコール問題は、トヨタ自身がトヨタ生産方式を忘れてしまったために起きたのではないだろうか?大野耐一が天国で泣いている。いや・・・このリコール問題は、大野耐一がトヨタに落とした雷かもしれない。
トヨタがトヨタ生産方式を忘れてしまったと思う理由
トヨタ生産方式では、増産を戒めている。2000年代になり、世界需要に応えるため、トヨタ自動車は増産に走った。結果的に快進撃し、自動車生産台数世界一位の座を手に入れた。一方で、この快進撃期間、奥田碩元会長は、自社の状況を「兵站線が伸びている」と称した。兵站線が伸びるとは、増産を戒めるトヨタ生産方式ではあり得ない状況である。
トヨタ生産方式の2つのキーポイント
自働化
- 品質は、工程で造りこむ!(自律的組織)
- つまり、品質管理部門が行うのではない(他律的ではない)
ジャスト・イン・タイム
- 必要なものを、必要なときに必要な量だけ造る!
- つまり、作り貯めはしない。
トヨタ生産方式に至った経緯
生産性が9分の1
- 自動車産業の生産性が米国:日本=9:1であった(昭和12年)。
- 米国と日本では需要が100倍違った。
- フォード生産方式に代表されるように、米国では自動車は大量生産されていた。
- 日本では多品種少量生産にならざるを得なかった。アメリカの方式を真似するわけにはいかなかった。
多品種少量生産とその解決策の平準化
- 多品種少量生産に対応するために編出されたのが、混流生産(生産の平準化)である。
- 混流生産とは、たとえばカローラ3台、コロナ3台の需要があった場合、カローラ3台を作ってコロナ3台を作るのではなく、カローラとコロナを交互に1台づつ作ることである。
- 混流生産は、ロット生産(一度に同じものを作る)よりも需要に適合していた。つまり、需要のある分だけ作る。
- つまり、作り貯めはしないということである。作り貯めは、需要の少ない日本では致命傷になりかねなかった。
副作用(段取り替え)とプロセス改善
- しかし、少量生産は段取り替えという副作用を生んだ。
- 絶え間ないプロセス改善が行われた。
- プレス金型の取替え時間
昭和20年代:2~3時間
昭和46年 :3分
景気変動に対する影響
- 高経済成長下であれば、そこまで無駄の削減努力をしなくても、売上も利益も伸びる。
- 問題は低成長期である。無駄を排除できていないと、損失に直結する。
- 生産性向上には不断の努力が不可欠である。
1970年代前半の第一次オイルショックでは
- トヨタの独り勝ち
- 米国ビッグスリーの敗北
トヨタ生産方式の展開
標準作業
- 標準作業を書く(時間・順序・標準手持ち)
流れを作る
- かんばん方式
- 平準化
- 同期化
- 離れ小島を作らない
不良品を出さない仕組み
- 不良品を出した工程が痛みを感じる仕組み
- 自律的
作業レイアウト
- 人間の働きが流れの上に反映できるようなレイアウト
無駄の徹底排除
- 無駄が二次的な無駄を生む。
- 例)在庫が発生すると、倉庫が必要となり、在庫管理の手間が発生する。
- 余力を捻出すべし。
プロセス改善
- タスクの数を減らす。つまり、段取り替えそのものを減らす。
- タスクの工数を減らす
改訂履歴
- 2010年2月16日 初稿