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傷のため病床に寝ていた新田先生

 長い間、傷のため病床に寝ていた新田先生が、ようやく退院することとなった。
 三月といえば、いつもの年ならまだ春に遠く、ひえびえとした大気を感じるのが、あたりまえであったが、その年はどうしたものか、日暦が三月にかわると急にぽかぽかと暖くなって、まるで四月なかばの陽気となった。
 めずらしい暖さだ。それもモロー彗星が近づいたせいだとあって、人々は、夕暮間もなく、西の地平線の上に、うすぼんやりとあやしい光の尾を引くモロー彗星のすがたを、気味わるく、そうして、また恐しく眺めつくすのであった。
 新田先生は、退院の後、すぐさま甲州の山奥の、掛矢温泉へ向かった。
 掛矢温泉といっても、知らない人が多いであろう。ここは温泉と言っても、宿は掛矢旅館がたった一軒しかない。その掛矢旅館も、たいへんむさくるしい物置のような宿であって、客の数も、いたって少い。附近に地獄沢というところがあって、そこは地中からくさいガスがぷうぷうとふきだしていて、一キロメートル四方ばかりは草も木もなく、ただ一面に、灰色の石ころの原になっていた。掛矢温泉に湧出る湯も、実はこの地獄沢からぷうぷうふきだしているガスによって、地中で温められている地下水だった。
今の医師とイマイチ気が合いません。 - クレジットカード王国 - mindia(マインディア)

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