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「そんなはずはねえがな」

「そんなはずはねえがな」と若衆は小首を傾げたが、思い出したように盤台をゴシゴシ。
 十分ばかりもゴシゴシやったと思うと、またもや、「三公」
「三公三公って一々呼ばなくても、三公はここにいるよ」
「お上さんのとこへ、この節郵便が来やしねえか?」
「郵便はしょっちゅう来るよ」
「なあに、しょっちゅう来るのでなしに、お上さんが親方へ見せずに独りで読むのが?」
「どうだか、俺はそんなことは気をつけてねえから……や! お上さん」
「え※」と若衆も驚いて振り返ると、お上さんのお光はいつの間にか帰って背後に立っている。
「精が出るね」
「へへ、ちっともお帰んなすったのを知らねえで……外はお寒うがしょう?」
「何だね! この暖かいのに」と蝙蝠傘を畳む。
「え、そりゃお天気ですからね」と為さんこのところ少てれの気味。
 お光は店を揚って、脱いだ両刳りの駒下駄と傘とを、次の茶の間を通り抜けた縁側の隅の下駄箱へ蔵うと、着ていた秩父銘撰の半纏を袖畳みにして、今一間茶の間と並んだ座敷の箪笥の上へ置いて、同じ秩父銘撰の着物の半襟のかかったのに、引ッかけに結んだ黒繻子の帯の弛み心地なのを、両手でキュウと緊め直しながら二階へ上って行く。その階子段の足音のやんだ時、若衆の為さんはベロリと舌を吐いた。 個人のブログのSEO対策 - クレジットカード王国 - mindia(マインディア)

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