クレジットカード王国の最新の日記
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そうしておいて

 そうしておいて、鍛冶屋の大将を手本にして、防毒壜を口にくわえた。それは奇妙な格好だった。だが誰も笑う者はなかった。尊い勇士たちの出陣だから……。
 後車へ飛びこんでみると、そのむごたらしさは筆紙につくされないほど、ひどかった。とても、ここに書きしるす勇気がない。どうしてそんなにひどいことになったかというと、結局、その車室の目張が、言訳的におそまつにしてあり、それも力を合わせず、めいめい勝手にやったための失敗だった。彼等は、毒瓦斯をあまりにも馬鹿にしていたのだった。
 七勇士は、できるだけ彼等を助けたけれど、結局、すぐ元気にかえったものはごくわずかだった。多くは、もう胸にひどい炎症が起り、苦悶はひどくなってゆく一方だった。
 壜をくわえた勇士たちが、やがて部屋へ帰ってきて、口から壜を放したときには、皆いいあわせたように顔をしかめ、歯をおさえて、口をきく者もなかった。
「どうもつらい防毒面だ……」
 やっと一人が口をきいた。他の勇士は、いたみとおかしさとの板ばさみになって、苦しそうに笑った。

「助けて、た、たすけてえ」 - クレジットカード王国 - mindia(マインディア)

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