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父の気紛れが

 父の気紛れが、面白くない仕辛い仕事を望むときには、梅麿はすーつと脇へ除けた。夜中に急に風呂を沸かさせたり、椽の下の奥に蔵つてある重いものを取出さしたり――さういふときには兄の鞆之助が、ぶつ/\いふ召使を困りながら指揮して、その衝に当つた。
 父はこのことを知つてゐて、
「梅は狡いやつだ」
といつて笑つたが、その狡さが気に入つてもゐた。
 兄の鞆之助は反対に調法の外、何から何まで、父の気に入らなかつた。父は兄息子の顔を見るとむつと黙つて仕舞ふか、癇癪を浴せかけた。命令通り出来上つた仕事も、その命令通りにした愚直なことが、そこに叱言の隙間もないことで父を怒らせた。兄はしじゆうおど/\してゐて、眼鼻立ちに神経の疲労と愁ひの湿りがあつた。濃い頭の捲毛だけが兄弟似寄つてゐた。兄弟は父が現代教育の方針に不満といふ理由で、一人は中学を、一人は高等学校を、途中から退学させられて、通つて来る二三人の家庭教師に就かされてゐるが、実は父が家庭に於ける享楽生活に手不足を来すのを、父は極力嫌つたためでもあつた。
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