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友之助に対してお筆が

 友之助に対してお筆がなんと言ったか、それは男自身の口から母の前で説明されているが、お蝶に対して彼女がなんと言いこしらえたか、それは判らない。おそらく友之助をあざむいたと同じような口ぶりでお蝶をあざむいたのであろう。それに欺かれたお蝶は勿論あさはかであったに相違ない。お蝶は処女の好奇心から、うかうかとお筆に釣り出されて、自分に恋しているという友之助に招魂社で逢った。両者のあいだに立って、お筆が巧みにあやつったのは言うまでもない。こうして、恋ならぬ恋が不思議にむすび付けられて、友之助の隣りの空家が、二人の逢いびきの場所にえらばれた。かれらはその後もお筆のあやつるがままに動かされていたが、この二つの人形にはさすがに魂がある。形はたがいに結び付けられていても、友之助のたましいはやはりお筆にかよっていた。お蝶の魂はやはり吉之助にかよっていた。
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