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成程それは好都合であると喜んでいると

成程それは好都合であると喜んでいると、三、四日の後、町の挽地物屋へ買物に立ち寄った時、偶然にあることを聞き出した。ひと月ほど以前、わたしの旅館には若い男女の劇薬心中があって、それは二階の何番の座敷であると云うことがわかった。
 その何番は私の隣室で、当分お客を入れないといったのも無理はない。そこは幽霊(?)に貸切りになっているらしい。宿へ帰ると、私はすぐに隣り座敷をのぞきに行った。夏のことであるが、人のいない座敷の障子は閉めてある。その障子をあけて窺ったが、別に眼につくような異状もなかった。
 その日もやがて夜となって、夏の温泉場は大抵寝鎮まった午後十二時頃になると、隣りの座敷で女の軽い咳の声がきこえる。勿論、気のせいだとは思いながらも、私は起きてのぞきに行った。何事もないのを見さだめて帰って来ると、やがて又その咳の声がきこえる。どうも気になるので、また行ってみた。三度目には座敷のまんなかへ通って、暗い所にしばらく坐っていたが、やはり何事もなかった。
探偵の仕事 - クレジットカード王国 - mindia(マインディア)

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