チャンドラ
2pt
ThinkPadになるために開発され、ThinkPadになれなかったノートPCのコードネームであり、愛称。日本のPC史上もっともユーザーに愛されたPCのひとつだと思う。
96年当時、IBMの日本向け製品の設計部門がリコー内部にあった。そこで次期リアルB5のThinkPadとなるべく設計されたが、当時売れ筋だったB5ファイルサイズのThinkPad 535と競合するために採用を見送られた(強度がIBMの基準を満たしていなかったという説もある)。
ふつうならお蔵入りになって終了なのだが、すでにNiftyに専用会議室があり(今で言うと某掲示板に専用スレがあるみたいなもの)、スペックを見たガジェット好きの皆さんがしこたま盛り上がっていた。IBMの設計部門とはいっても、法人登録されている別会社である。IBMが出さないなら他の会社で生産販売しても問題はないということで、300台限定で生産してみちゃった会社があり、即完売。さらに数社が乗っかる形で販売が拡大していった。複数の会社から同じスペックのPCが発売されていたっていうのも今にして思えば楽しい話である。
ごく普通の1スピンドルノートだが、本体にすべてのインターフェースが装備されており、PCカードスロットも3枚ぶんあり、ビデオカメラ用の汎用バッテリーを2個装備しているため駆動中でもバッテリー交換が可能など、いろいろと通好みかつ理にかなった仕様だった。存在のマイナーさが状況を加速させた面もあるが、ちゃんとユーザー視点で設計された点がしっかり評価されたということだろう。
後継機である通称チャンドラ2は、同じような経緯で数社から発売されたあと、IBMにも正式採用されてThinkPad 235となった。ことの経緯をちゃんと理解していたIBMは235発売後も特に他社の生産販売に制限を加えなかったので、他社製チャンドラ2も併売された。そんな懐の深さを見せつけられたことで、うっかり両方買っちゃう熱心なユーザーも多数いたりした。
ネットブック全盛の現在、たかがVGAのB5ノートが30万近い値段だったなんて信じられないかもしれないが、そんなロマンもあったのだ。
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