一物多価
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一物一価の世紀
20世紀は大量生産・大量消費の時代だった。同じ物は同じ値段で売られていた。物の存在は、広告・宣伝によって知ることができた。物が不足していた時代(日本では1970年ごろまで)、価格決定は、売り手主導であった。原価+適正利潤により売値は決まっていた。儲けすぎることは許されず、企業の売上高利益率はわずか数%だった。
一物多価へ
20世紀の終盤より、物により、一物一価から、一物多価へ移行していくものがあった(※)。
中古市場
いくつかの分野で中古市場ができてきた。自動車、そして、本、レコード。新品と中古品では、当然、値段が異なった。通常、中古品のほうが安くなるが、物によっては希少性から値段が高いものもあった。しかしその場合、新品は既に入手不可能な場合であった。
航空券
次に、飛行機の運賃が、一物多価になった。初めて飛行機に乗ったのは1986年。アメリカに行くのに30万円以上した。次に1988年、13万円だった。1990年、11万円だった。以上、夏休み価格である。6月などの閑散期であれば、1990年時点で、9万円だったと記憶している。その後、アメリカ行きは5万円、3万円と値下がりしていった。
しかし、これは格安航空券の料金である。格安航空券というのは、旅行代理店が団体購入したチケットのバラ売りである。その後、航空会社がPEX等の正規割引運賃を出すようになった。
アメリカ行きの正規料金は、現在25万円前後である。正規割引だと約半値になる。格安航空券は、正規割引の半値以下である。つまり、正規料金の20~25%程度にしかならない。
本体ではなく付帯条件による価格差
これが一物多価である。席は同じである。しかし、予約の変更可否、事前予約などの縛りにより、安く入手できるわけである。その物ではなく、付帯サービスによって、値段のレンジが変わる。
一物多価が可能になる理由
航空券の一物多価を可能にしたのは、オンライン発券システムである。全ての航空会社支店、旅行代理店は、オンラインシステムで繋がった。
話は変わるが、JR(昔は国鉄)でオンライン予約システムができる前、特急券の座席指定予約って、どうしていたのだろう。ご存知の方、教えて下さい。恐らく、1960~1970年代に出来たのだと理解しています。
21世紀は一物多価の世紀
インターネットにより情報コストがゼロに
繰り返すが、オンライン発券システムが航空券の一物多価を可能にした。21世紀、ありとあらゆる情報が、インターネットでやり取りされるようになった。情報交換コストが、劇的に現象した。いや、ほぼゼロに等しくなった。
航空券は数万円のものである。数万円のものを売買するから、1980年代にコストをかけたシステム導入ができた。しかし1980年代に、数百円のものを売買するのに、付帯条件によって値段をマッチングさせるというのは、コスト的に見合うはずがなかった。
ありとあらゆる商材で需給マッチングが可能
しかし、21世紀はコストゼロの時代である。ありとあらゆる品物やサービスが、需給マッチングが可能になり、付帯条件による価格差をつけることが可能になったのである。
5倍、10倍の価格差の時代に
事前予約・キャンセル不可という縛りの条件をつけることにより、安くする。キャンセル可能、割り込み可能な場合は、逆に定価よりも値上げすることも可能である。航空券がそうであったように、あるいは航空券以上に、値段差を広げることもありうる。同じものなのに、5倍、10倍、値段が異なる時代になる。
脚注
※筆者の記憶によるので、もし追記すべきものがあればコメント願いたい。
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