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乗るわ、降りるわ

 乗るわ、降りるわ、混合う人数の崩るるごとき火水の戦場往来の兵には、余り透いて、相撲最中の回向院が野原にでもなったような電車の体に、いささか拍子抜けの形で、お望み次第のどれにしようと、大分歩行き廻った草臥も交って、松崎はトボンと立つ。
 例の音は地の底から、草の蒸さるるごとく、色に出で萌えて留まらぬ。
「狸囃子と云うんだよ、昔から本所の名物さ。」
「あら、嘘ばっかり。」
 ちょうどそこに、美しい女と、その若紳士が居合わせて、こう言を交わしたのを松崎は聞取った。
 さては空音ではないらしい。
 若紳士が言ったのは、例の、おいてけ堀、片葉の蘆、足洗い屋敷、埋蔵の溝、小豆婆、送り提燈とともに、土地の七不思議に数えられた、幻の音曲である。
 言った方も戯に、聞く女も串戯らしく打消したが、松崎は、かえって、うっかりしていた伝説を、夢のように思出した。
 興ある事かな。
 日は永し。
 今宮辺の堂宮の絵馬を見て暮したという、隙な医師と一般、仕事に悩んで持余した身体なり、電車はいつでも乗れる。
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