クレジットカード王国の最新の日記
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言う中に胸が迫って

 言う中に胸が迫って、涙を湛えたためばかりでない。ふと、心付くと消えたように女の姿が見えないのは、草が深くなった所為であった。
 丈より高い茅萱を潜って、肩で掻分け、頭で避けつつ、見えない人に、物言い懸ける術もないので、高坂は御経を取って押戴き、

山川険谷  幽邃所生  卉木薬艸  大小諸樹
百穀苗稼  甘庶葡萄  雨之所潤  無不豊足
乾地普洽  薬木並茂  其雲所出  一味之水

 葎の中に日が射して、経巻に、蒼く月かと思う草の影が映ったが、見つつ進む内に、ちらちらと紅来り、黄来り、紫去り、白過ぎて、蝶の戯るる風情して、偈に斑々と印したのは、はや咲交る四季の花。
 忽然として天開け、身は雲に包まれて、妙なる薫袖を蔽い、唯見ると堆き雪の如く、真白き中に紅ちらめき、瞶むる瞳に緑映じて、颯と分れて、一つ一つ、花片となり、葉となって、美女ヶ原の花は高坂の袂に匂ひ、胸に咲いた。

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