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今宵は誠心院に夜通し語り明す事にして

 今宵は誠心院に夜通し語り明す事にして來たので、質素にして來た供の者も歸し、ひつそりとした小御堂の中に殊勝に尼君がお上げになつてゐる法華經に耳を傾けつつ、赤染衞門はさながら夢のやうに思つた。和泉式部の華やかであつた時には理解のある赤染衞門自身すらも、淫蕩の女と蔑すんだ此の人の過去の姿を思ひ、現在かうして物寂びた御堂の中に心から誦經してゐる尼君となつた和泉式部を思ひ、人の一生の限り無く擴げられてゆく未來への道を尊く思はせられてゐた。さう云ふ赤染衞門はもう盛りの過ぎた老婦人で、和やかな額の上に分けた髮にも幾筋となく白髮が目に立つてゐた。
 誦經がすんだ處で、靜かに座を離れた尼君は赤染衞門に近くにぢりよつて

「本當に夢のやうな心地が致します。山近きこの里に、此の頃明け暮れ聞くものは、鹿の聲ばかり、それにも馴れて、日が昇れば晝と思ひ、月が澄めば夜と思うて、つい月日さへ數へることもなくて、明し暮す事でございますが、かうして御目に掛りますと、何にか一つの頼り處を得たやうな、さすがに生ける身の喜びを感ずる私でございます。」

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