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艦載機一号の操縦者は

 艦載機一号の操縦者は、柳下航空兵曹長だった。命令の出たときには、すでに空曹長の用意は全部整っていた。
「柳下空曹長です。一号機の出発用意よろしい」
 すると艦橋の艦長は、わざわざ伝声管にとりついて、重任の柳下航空兵曹長に、こまごまと任務について訓令するところがあった。
「――分かったな」
「はい」
 と空曹長は早口に復誦した。
「よろしい、出発。武運を祈る」
「はっ、では行ってまいります」
 と、空曹長は隣の家へでも、出掛けるような気軽さで、愛機の席についた。
 命令一下、艦橋の下に隠れていた扉が、ぱっと左右に開くと、バネ仕掛のようにカタパルトが顔を出し、その次の瞬間、轟然たる音響もろとも風を切ってぱっと外にとびだした軽快な一台の艦載飛行機! それこそ柳下空曹長の操縦する一号機であった。
 暗澹たる空中に、母艦をとびだした艦載機の爆音が遠ざかって行った。
「柳下、しっかりやれ。頼むぞ」
 誰かが叫んだ。
 艦長以下幕僚たちはいずれも見えない空を仰ぎ、暗の空にとびだしていった勇士の前途に幸多かれと祈った。

地図作成< EMC活動(中越沖地震災害対策支援GISチーム地図作成班)

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