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緑色の満々たる河水は

緑色の満々たる河水は、ただ一つの思想のように一体をなして、波も立てず、ほとんど皺(しわ)も寄せず、脂(あぶら)ぎって光ってる水形模様を見せながら、流れつづける。クリストフはもうそれを眼には見ない。彼はその音をなおよく聞くために、眼をすっかり閉じている。たえざる水音は彼の心を満たし、彼に眩暈(めまい)を与える。その覆(おお)いかぶさってくる悠久(ゆうきゅう)な夢に彼は吸い寄せられる。河水の騒々しい基調の上に、急調の律動(リズム)が激しい愉悦をもって飛び出してくる。そしてそれらの節奏(リズム)のまにまに、棚(たな)に葡萄蔓(ぶどうづる)がよじ上るように、種々の音楽が高まってくる、銀音の鍵盤から出る白銀の琶音(アルペジオ)、悩ましいヴァイオリンの響き、円(まろ)やかな音調のビロードのようなフルートの声……。景色は消えてしまった。河は消え失せてしまった。柔かな薄ら明るい大気が漂っている。クリストフの心は感動のあまり震えてくる。今や眼に見えるのは? おう麗わしい種々の面影!

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