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我意を折らなければならなかった

我意を折らなければならなかった。痛烈な反抗心を執拗(しつよう)に押し通してはみたが、ついに彼の悪意は打擲(ちょうちゃく)にうち負けてしまった。毎日朝と晩に三時間ずつ、クリストフは責道具の前に引据えられた。注意と不愉快とにたまらなくなり、頬(ほお)や鼻に大粒の涙を流しながら、彼は白や黒の鍵(キイ)の上に小さな赤い手を動かした。音符を間違えることに打ちおろされる定規の下に、またその打擲よりいっそう忌わしい師の喚(わめ)き声の下に、彼の手は寒さに凍えてることがしばしばだった。音楽は嫌(きら)いだと彼は考えていた。それでも熱心に努めていた。その熱心さは、メルキオルを恐(こわ)がってるというせいばかりでもなかった。祖父のある言葉が彼に深い印象を与えていた。祖父は孫が泣くのを見て、重々しい調子で言ってきかした、人間の慰謝と光栄とのために与えられている最高最美の芸術のためになら、多少の苦しみは忍ぶに甲斐(かい)のあることだと。クリストフは[#「クリストフは」は底本では「クリストスは」]祖父から大人並に話しかけられるのを感謝していて、その質朴(しつぼく)な言葉に内心動かされた。彼の子供らしい堅忍と生まれながらの傲慢(ごうまん)とは、その言葉をよく受けいれた。

緑色の満々たる河水は - クレジットカード王国 - mindia(マインディア)

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