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夏の事ですから道喜の笹ちまき

 夏の事ですから道喜の笹ちまき、それに粟田口のいちご、当時京都の名物とされていたこれ等の季節のものを運んで女中二三人が入れ交り、立ち交り座敷へ現れました。いずれも水色の揃いの帷子に、しん無しの大幅帯をしどけなく結び、小枕なしの大島田を、一筋の後れ毛もなく結い立てています。京女の生地の白い肌へ夕化粧を念入りに施したのが文字通り水もしたたるような美しさです。円通は先程からまじまじと女達の姿に見入っていましたが遂々感嘆の声を立てました。
「いや驚くほど美しい娘さんたちだ。揃いも揃って斯ういう娘さんがたを持たれた御主人は親御としてさぞ嬉しいことであろうな」
 酌婦をすっかり此の家の令嬢と思い込んでしまったのでありました。この一言に、四郎兵衛は、もうこの客たちに遊興させようなぞという気は微塵も無くなりました。後は「へえー」と平伏して直ぐに座を立ち、信徒が帰依の高僧を供養する心構えで酒飯を饗応すべく支度にかかりました。

http://mindia.jp/book/oukoku/entry/7095

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