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何にも知らぬ二僧は

 何にも知らぬ二僧は、すっかり悦んで箸を取りながら主人や女中を相手に四方山の咄の末、法眼が言いました。
「時に御主人、われ等ここへ斯う参って、御家族にお目にかかり懇な御給仕に預るのも何かの因縁です。折角の機会ですから娘御たちに三帰を授けてあげましょう。私の唱える通り、みなさんも合掌して唱えなさるがよい」
「それがいいそれがいい」
 円通も賛成しました。まるで狐に憑かれたような顔をして互いに顔を見合せ、二僧を取巻いた主人と女中は環がたに坐って合掌しました。座敷はしんと静まり返りました。
 夕風が立って来たか、青簾はゆらゆら揺れます。打水した庭にくろずんだ鞍馬石が配置よく置き据えられ、それには楚々とした若竹が、一々、植え添えてあります。色里の色の中とは思えぬ清寂な一とき。木立を距てた離れ座敷から、もう客が来ているものと見え、優婉な声で投げ節が聞えて来ます。

http://mindia.jp/book/oukoku/entry/7100

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