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それが三月の舞台に上ったのを観ると

 それが三月の舞台に上ったのを観ると、わたしは失望した。私が書いた部分はほとんど跡形もないほど変っていた。私はそれを榎本君に話すと、榎本君は笑いながら「それだから僕は観に行かないよ」と云った。榎本君は福地桜痴先生に従って、楽屋の空気にもう馴れている人である。榎本君の眼には、年の若い私の無経験がむしろ可笑く思われたかも知れなかった。採菊翁自身が執筆の部分はどうだか知れないが、榎本君が担当の部分にも余程の大鉈を加えられていたらしかった。勿論、この時代にはそれがむしろ普通のことで、素人――榎本君は素人ではないが、その当時はまだ其の伎倆を認められていなかった――が寄り集まって書いた脚本が、こういう風に鉈を加えられたり、鱠にされたりするのは、あらかじめ覚悟してかからなければならないのであった。わたしが榎本君に対して不平らしい口吻を洩らしたのは、要するに演劇の事情というものに就いて私の盲目を証拠立てているのであった。復縁したいなら探偵に相談 - クレジットカード王国 - mindia(マインディア)

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