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わたしは留守番だから

「わたしは留守番だから、あしたの晩は遊びにおいでよ」と前の日にKのおじさんが云った。わたしはその約束を守って、夕飯を済ますとすぐにKのおじさんをたずねた。Kの家はわたしの家から直径にして四町ほどしか距れていなかったが、場所は番町で、その頃には江戸時代の形見という武家屋敷の古い建物がまだ取払われずに残っていて、晴れた日にも何だか陰ったような薄暗い町の影を作っていた。雨のゆうぐれは殊にわびしかった。Kのおじさんも或る大名屋敷の門内に住んでいたが、おそらくその昔は家老とか用人とかいう身分の人の住居であったろう。ともかくも一軒建てになっていて、小さい庭には粗い竹垣が結いまわしてあった。
 Kのおじさんは役所から帰って、もう夕飯をしまって、湯から帰っていた。おじさんは私を相手にして、ランプの前で一時間ほども他愛もない話などをしていた。時々に雨戸をなでる庭の八つ手の大きい葉に、雨音がぴしゃぴしゃときこえるのも、外の暗さを想わせるような夜であった。柱にかけてある時計が七時を打つと、おじさんはふと話をやめて外の雨に耳を傾けた。
サークルでTシャツを作った思い出 - クレジットカード王国 - mindia(マインディア)

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