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M&Aと学習の履歴

一般的に、組織学習論において、「M&A時におこる学習」は「知識の移植・移動」と考えられています。

要するに、ある知識Aを有する会社A'と、ある知識B'を有する会社Bが合併した場合には、知識A'と知識B'を有する会社が生まれる、ということです。

この説明において知識は物象化されています。知識が、あたかも「移動」するかのように、PMI時の学習が説明される傾向があります。非常に「綺麗な説明」ですね。

しかし、M&Aや企業再生の現場に居合わせたことはないので、僕はよくわかりませんけれど、それは、そんな「綺麗な学習」だけではないような気になるのです。

確かに、組織のレベルでは、組織的知識の移動という側面はあるのかもしれない。
でも「働く大人」の視点にたった場合、そこにはまた違ったパースペクティブが広がります。そこには、激しい不安、恥辱、葛藤、喪失感を伴うような学習、学習棄却が存在するような気がします。

 昨日まで自分が働いていた職場は、もう、ない
 昨日まで自分が働いていた仕事のやり方は、もう、通用しない
 昨日まで自分は、もう、通用しない

新たな職場への文化適応の問題も噴出してきます。職場のネットワークも強制的に寸断されることもあるでしょう。そうしたPMI時の非常に生臭くて、リアリティがあって、アクチュアルな学習、実態が、非常に気になりました。そのような経緯があって、船川さんとお会いすることになりました。

http://www.nakahara-lab.net/blog/2009/10/post_1592.html