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分子生物学/生体情報論の履歴

2010夏学期、火曜2限 太田先生

内容

1.DNA核酸の構造と質とゲノムDNA解析手法
2.DNA複製
3.DNA修復、組換え
4.染色体の構造と機能
5.細胞核の構造と機能
6.真核生物遺伝子発現抑制
7.ヒストンバリエント・ヒストンシャペロン
8.ヒストン修飾とエピゲノム、X染色体不活
9.DNAメチル化・インプリンティング
10.クロマチンモデリング
11.DNA代謝細胞周期チェックポイント
12.遺伝子恒常の破綻とガン・老化などの疾患との関係

過去問:2009

問1 Z型DNAとB型DNAの構造について説明せよ。
問2 DNA複製について
(1)DNAポリメラーゼによるDNA複製反応とRNAポリメラーゼによる転写伸張反応の違いを2つ挙げ、説明せよ。

RNA Polはリボヌクレオチドを付加、RNA Polにはプライマーが必要ない。

(2)テロメラーゼによるテロメア部分のDNA合成の仕組みを説明せよ。その際、なぜテロメラーゼが必要とれるか、DNAポリメラーゼの特徴を踏まえて説明せよ。
(3)大腸菌のDNAポリメラーゼを用いてDNA合成を行うとき、1秒間で合成可能なDNA鎖の長(ヌクレオチド数)は下記のうちどれがもっとも適当か。
1,10,100,1000,10000

問3 下記の遺伝子疾患と最も関連の深い用を下記の群から選んで記せ。
1)遺伝性非ポリポーシス大腸ガン:ミスマッチ(不対合)修復、
2)コケイン症候群:ヌクレオチド除去修復、転写共役型修復、CSA
3)ファンコニー貧血:低身長、FANCD、RAD51、DNA鎖間架橋修復、
4)色素乾皮症:ヌクレオチド除去修復、XPA-G、
5)ウェルナー症候群:補助3'-エキソヌクレアーゼとDNAヘリカーゼ、WRN

  1. α)ブルーム症候群[複数のガン、発育停止、ゲノム不安定]:複製に関わる補助DNAへリカーゼ
  2. β)血管拡張失調症(AT)[白血病、リンパ腫、γ線感受]:ATMタンパク、二本鎖切断によって活れるタンパクキナーゼ


問4 組換えについて。
(1)下記の現象はa相同組換え、b非相同組換え、c部位特異的組換えのどれに属するか。
あ)V(D)J組換え:c
い)減数分裂期の遺伝的組換え:a
う)トランスポゾンの染色体への侵入:b
え)初期の遺伝子治療:a?
お)ES細胞へのジーンターゲッティング:a
か)ニワトリ抗体遺伝子可変領域での遺伝子変換:a
き)遺伝子銃法による植物染色体への遺伝子挿入:a

(2)減数分裂期の遺伝的組換えが頻発する部位のことをなんと呼ぶか。また組換えに先立ってその部位で生じるDNAの変化と、その変化をもたらす真核生物に広く保存れた酵素の名前を答えよ。
ホットスポット
DBS:DNA二本鎖切断
酵素:Spo11:DSBヌクレアーゼ

  1. α:Mre11-Rad50複合体=二本鎖切断導入の前段階とその後のDNA修復の両方に関与
  2. β:Rad51/RecAタンパク質=DNA相同領域検索とヘテロ二重鎖DNAの形成に関与


(3)相同組換えのいに生じる中間体のうち、X型の構造をなんと呼ぶか
holliday junction
(4)相同組換えの様式には、コピー・ペースト型の遺伝子変換と、もう一種類遺伝子群の交互入れ替えを伴うものがある。後者のことをなんと呼ぶか。
交叉型(⇔変換型)

問5 クロマチン構造とヒストン修飾について
(1)下図はヒストンH3のN末端テール部分の化学修飾パターンを示した物である。それぞれのパターンの化学修飾をもつヒストンを多く含む染色体領域で、どのような効果が認められるか。
あ:遺伝子発現活、い:遺伝子発現抑制、う:ヘテロクロマチン形成、え:X染色体不活
K9のメチル化:い、う、え
K4のメチル化とK9のアセチル化:あ
S10のリン酸化とK14のアセチル化:あ
K27のメチル化:い、う
(2)上記のように、ヒストンの修飾パターンによって、染色体の一部の活動度が制御れるとする仮説をなんというか。
ヒストンコード仮説
(3)ヒストンの修飾パターンを読み解くタンパク質を総称してなんとよぶか。また、メチル化ヒストンに結合するタンパク質ドメイン、アセチル化ヒストンに結合するタンパク質ドメインの名称を答えよ。
Code Reading Factor
アセチル化:ブロモドメイン:
メチル化:クロモドメイン:HP1、ポリコームタンパク質

(4)ヒストン修飾によって制御れる高次生命機能の例を一つあげ、簡単に解説せよ。



問6 今回の授業の感想等

1.DNA核酸の構造と質とゲノムDNA解析手法

  • DNA:デオキシリボヌクレオチド

リン酸+五炭+塩基(ATGC)

  • RNA:リボヌクレオチド

五炭の2'にOH基が結合しており、DNAと比べて不安定。

  • ヌクレオチドの重合:リン酸ジエステル結合

※リン酸は負に帯電しているので水に溶ける

  • シャルガフ則:A:T=G:C=1:1
  • A-T水素結合2つ、G-C水素結合3つ
  • DNAの構造

A型:脱水状態
B型:生体内の普通の状態
Z型:ある種の配列のとき(生体内に存在するかは不明)

プロペラツイスト

  • DNAの高次構造

1:三重鎖構造=B-DNA中のプリン塩基と第3の一本鎖DNAのピリミジン塩基間の塩基対形成。(CG-C,TA:T,TA:A,CG:G)
ワトソン・クリック塩基対+フーグスティン塩基対が加わる

シュードノット構造(偽の結び目)←RNAでは重要

2:四重鎖DNA
GC-RICH配列に出やすい。
染色体末端にあるテロメアはGC-RICHなので、この構造が多くありそう。
3:湾曲DNAタンパク質が湾曲した部分と結合する。
4:十字型DNA:パリンドローム、回文配列
輪ができる→DNAが組換えを起こしたり、DNA複製が止まったりする。ちなみに、制限酵素は回文配列を切断している。
5:Holliday Junction:組換えの中間体

  • DNAの変
  • 熱、pH変化、有機溶媒(尿素、ホルムアミド)などで協同的に起こる。
  • TM-melting temp. 融解温度、半分のDNA分子が変する温度:DNA配列に依存する。

GC-rich:tmが高い
AT-rich:tmが低い
tm=41.1(GC含有%)+16.6log[Na+]+81.5

  • tmはDNAの長に依存する。相同領域は長い方が安定して結合する。
  • tmは塩濃度に依存:Nacl濃度を変えることでtmを調節できる。

濃色効果:DNAは融解すると紫外吸光度が40%増大する。OD260nm

  • annealing:アニーリング

◆加熱して二本鎖から一本鎖へ分離せたDNAを冷やして相補鎖を対合せる処理

DNAの変はホルムアミド、尿素を入れると起こりやすい。

42℃、50%、ホルムアミド:高ストリージェンシー
35℃、50%、ホルムアミド:低ストリージェンシー、多少配列が違っていてもくっつく。

  • DNAのトポロジー:閉環状DNAや両端が固定れているDNAで重要になってくる。

プラスミドなどの閉環状DNAでは、トポロジー異体が存在する。
1:super coiled from ⅠDNA
2:ねじれがないopen circular from ⅡDNA
↑一本だけにニック(切れ目)が入る。

※ネガティブスーパーコイル状態は、局所的DNAメルティングを起こし、転写・複製・組換えにおいて重要な役割を果たす。

  • Lk(リンキング数)=T(twist、ねじれ)+W(writhe、ひねり)
  • トポイソメラーゼ:切ってつなぐタンパク質。染色体でのDNAのひねりを解消する。