互酬
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概要
直接的・短期的な見返りを求めない利他の行為を指す。恩義を受けた者は、いづれお返しをすることになるが、お返し内容の価値は等価である必要はなく、また、返礼の相手も同一である必要がない。恩義を受けたら、自分のできることを恩義を必要としている誰かに返す。これを繰り返していくことにより、社会(コミュニティ)は健全に発展していく。コミュニティ三原則の一つ(利他)。
『昨日までの世界』による言及とその分析
ジャレド・ダイヤモンド著『昨日までの世界』では、昨日までの世界、つまり原始的な伝統的社会(ニューギニアやアフリカを想定)は、互酬的な社会だったという。
非等価交換である
われわれの世界では、物品購入のプロセスが交換的なやりとりとしてみなされる点である。何を購入するにしても、それは交換的なやりとりであって、贈与と返礼の互酬的なやりとりではない。われわれの世界では、買い手が何かを受け取り、それに対して何か別の物(通常は貨幣)を売り手に渡す。
1:1の交換、等価価値の交換ではない。
関係性強化につながる
彼らのあいだで重要だったのは、物々交換が彼らの個人的関係の強化に役立つことだった。
互酬を繰り返すことは、関係性強化に繋がる。
物品の必要性よりも関係性強化
伝統的社会では、政治的な理由や社会的な理由から、交易者間の関係を維持したいがために、その物品がいずれの側にとっても自前で調達可能な物品であるにもかかわらず、取引の対象となることもまた多いのである。
物々交換とは、相手が不要でこちらが必要なものと、こちらが不要で相手が必要なものを交換することであると理解されているが、現実問題、そのように、相互の需要と供給が一致する機会はない。本書の分析では、一致しなくても(物自体の必要性がなくても)、関係性を構築するために、交換することを説いている。
『シェア』による言及
「間接的互酬性」の文化は「贈与経済」とも呼ばれ、これは、今すぐに、あるいは先になって見返りがあるというはっきりした取り決めがたとえなくても、モノやサービスを与えることだ。
関連ワード
関連ワードというより、言い換えの言葉がいくつかある。どのワードを表題にしようかと迷ったが、「互酬」を表題にした。「お互いに酬いる」という漢字の意味を持つことから、気に入った。ただし「互酬」は「かな漢字変換」(MS IME2010)では変換されない。
- Give and Given
- 利他
- 互恵的利他主義
- 相互扶助
- 情けは人のためならず
- 助け合い
- 結(ゆい)
互酬経済
資本主義経済・貨幣経済に変わりうる互酬的な経済社会。すでにいくつかの関連ワードが出てきている。
- 評価経済
- 非貨幣経済
- 贈与経済
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