企業活動とプロボノ活動
先日とある社外団体の打ち合わせに出て、今年度の施策方針を話し合った。その際にいくつかの議論で、経営における個人の社外活動へのコミットメントが不足している故に、企業として機会損失を起こしていることがあった。そこで経営の観点で、プロボノ活動におけるメリット、デメリットと考慮すべきポイントを考えてみた。
プロボノ活動のメリット
企業の内部能力を強化する
従来プロボノ活動は企業活動への貢献のない活動と見られてきたため、一種の社会貢献活動として捉えられ、業務としては認められていなかった。ところがグローバル化により、企業における能力評価の基準の有用性が怪しくなってきている現在、社外でも通用する能力の確保は急務となっている。また裁量労働の対象者には、自律的な業務の推進と能力開発を求めるため、目先の業務遂行もさることながら、業務の効率化や事業の革新に対しても企業として能力発揮を要求する一方、能力開発のあるべき姿が事業のスピード化により見えなくなっている。
社外で通用する幅広い知識やコラボレーションの経験を有し、有用な情報を活用して柔軟かつ俊敏な動きができる能力の確保が企業にとっては重要になりつつあるため、プロボノ活動は新たなOn Job Trainingの場として魅力的である。
社員の活性化を果たす
企業人事が極めて有能であれば、いかなる組織でも各自の持つ能力に合った業務機会を適切に提供することで、企業活動を極めて有効に働かせることが可能である。もしそうならばイノベーションは企業規模に応じて発生するはずであることを考えると、残念ながらそれは理想論であることが分かる。そこで一方向だけでなく他方向でのアプローチを行うことで、補間することが不可欠となる。
企業より求められる業務は、個人の能力の一部で遂行していることを考えると、他の能力が実は新たなイノベーションの発生に役立つ可能性がある。プロボノのような組織に囚われない活動は、これらの能力を引き出す機会を生むことに役立つ。
もちろん全社員が成長しこうでなく、現在の能力のままでよいと考えている社員も多数いる。しかしその社員にとっても、自らの不得意領域をカバーしてくれる人物の登場を期待していることは確かである。プロボノはリーダと参加したいメンバー、双方にとって自らを活性化させる良い機会となる。
企業と社会の関係を良好に保つ
社内の能力評価基準よりも社外の評価により事業の収益性が決定する傾向が強くなってきている。またインターネットの発達により、企業の一個人の活動がバイラル的に伝わり、大きな話題性を生むことがある。例えば今までネットとは無関係だった製造業の企業から、ネットベースのプロボノ活動による支援が実現し、話題になった場合、これまで接点のなかった業種やユーザとの接点を生む機会となる可能性がある。結果として自らの活動に社会の目を向けさせる良い機会にもなるし、企業にとっては新たなビジネスチャンスにつながる。当然その際にはあまり役に立たない売り込みもあるだろうが、それにも増して、PR以上の実業に結びつく可能性の高い効果が期待できる。
プロボノ活動のデメリット
本来求める業務とのバランスの欠如
まず業務時間中にプロボノ活動を行うことが挙げられる。業務時間外に行うにせよ、会社のリソースを用いてプロボノ活動における資料作成や連絡を行うのを好ましくないと考える向きもあるだろう。ましてや業務時間内に行う位なら、業務を行えという考えもある。しかしここで言う業務とは、経営陣から見た業務であり、そもそも管理できていないのはマネジメントの問題と言える。
更にエスカレートすると、業務をないがしろにしてプロボノ活動を行う行為がある。これも当然マネジメントのレベルで解決できる問題である。もしできないのであれば、それはマネジメント側にも問題があるため、そもそも人事制度を含めた社内システムの見直しが必要とのサインといえる。
プロボノ活動を社員に奨励する際、これは最も気になるところである。しかし本質的には社内制度の問題点に起因していることといえる。
未知の不測事態の発生
社外でのプロボノ活動は社会と直接個人が関係を持つ。そのため企業の枠を超えたトラブルの発生を生み出す恐れもある。例えばボランティアベースで子供に様々な活動を提供するNPO団体にプロボノとして参画していたところ、事故が発生したとする。その場合企業は主体ではないが、社員の所属する企業としてのデメリットが何かしら発生する。こうした場合に備えて企業側も何がしかの対策を事前に講じておく必要がある。
またプロボノとして参加した活動が実は反社会的だった場合、そこからどう退散するかという問題もある。放置すれば社員だけでなく企業全体にかかわる問題である。放置すれば後々まで引きずり、あるとき致命的な事件になる恐れがある。こうした危機管理も企業にとって必要といえる。
プロボノの「ブラック」な使い方
今までは故意、または悪意のないデメリットだったが、それ以外にも悪意を持ったデメリットも考えられる。例えば反社会低な活動があったとし、それを知りつつ入るというケースである。また会社としてもプロボノと証した業務時間外の拘束の可能性もあるため、企業がプロボノ活動を奨励する場合、それが労働法として問題ないかどうかを確認することも必要である。
対策は?
以上のように見た場合、プロボノにおけるメリット、デメリットの対策は、プロボノ活動に対する適切なマネジメントの設定、リスク対策としての活動の把握とガイドラインの可視化にあると考える。
プロボノへのマネジメントを必要十分に行っているか
- 社員がプロボノ活動を行うに際しての期待する効果の明確化
- プロボノ活動を奨励するにあたって改善すべき制度や仕組みの把握
- プロボノに必要と見られるリソースの把握と、Extraのリソースの必要性が発生した場合の対処
- プロボノを通じたトラブル発生時の対処方法の設定と周知
プロボノの活動の把握をどう行うか
プロボノ活動のガイドラインを外部に公開しているか
考察
マネジメントがプロボノ活動を企業活動と位置づけるかは、本質的なテーマとして議論が絶えない。しかし例えば従業員の住むマンションでの自治会活動は、また町内会活動はどうだろうか。こうした昔ながらの活動とプロボノ活動の境界線はどこにあるか。企業活動と直接関係はないが、間接的に影響をのある事柄に対し、「やらされ感」を持って対応するか、それとも積極的に対応するかは、本質的なマネジメントの志向性、企業の文化に依存しているといえる。
参考情報
労働基準法
http://www.houko.com/00/01/S22/049.HTM
日本hpでの社外活動規定
http://h50146.www5.hp.com/info/hr/work_life.html
IBM’s Corporate Service Corps
http://www-06.ibm.com/ibm/jp/provision/no60/pdf/60_mng3.pdf
東芝グループ行動基準
http://www.toshiba.co.jp/csr/jp/policy/soc.htm
専門業務型裁量労働制
http://www.mhlw.go.jp/general/seido/roudou/senmon/index.html
サラリーマンの副業
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