AmazonのKindle Fire
US東海岸時間の2011年9月28日、AmazonからKindle Fireが発売された。価格が従来比の半分以下と成る$199ということがもっとも大きな話題と成っている。価格も踏まえ、トピックを以下のとおりまとめてみた。
価格
価格がそれまでの市場製品と比べて半額以下、というのはとてつもない変化である。さっそくClayton Christensen教授も反応し、Destructionと述べている。AmazonはAndroid端末市場では後発のため、結局価格を下げることでシェアを席巻することが、今後の戦いを有利に進める上で重要となってくる。
Amazon Silk
3つのメリットを実現することで、顧客の囲い込みを実現している。
1つは端末のパフォーマンスを高めなくても高次元のサービスを提供できるため、端末単価を安くできること。
次に自社の持つIaaSサービス「EC2」を流用することで、構築を短時間で可能にすると共に安定したサービスを可能とすること。
最後に顧客が通過する「トールゲート」を用意し、そこにショッピングサイトでのテクノロジノウハウをつぎ込むことで、実践的なサービスを実現すること。
通信料無料
USにおいてはネットワーク接続は無料とアナウンスされている。これができるのはこれまで培ってきたKindleのビジネスにおいて、通信キャリアからデータ通信回線をバルク買いしてきたことが大きな意味を持っている。つまりサービス投入に当たって、必要となる通信容量とそのコストについてのノウハウがあるため、ビジネスとして成立する価格をはじき出せる。
なおKindle Fireで接続できるネットワークは不明だが、Kindleの延長と考えるとAT&Tと考えられる。ローミング先での利用は制限または別途課金されるか、当面難しいのではと考えられる。
何故Kindle FireはAmazonから出たのか
もし競合他社がKindle Fireに類した端末をどう価格で投入したらどうなるだろうか。価格はともかくとして、Amazon Silkの仕組み、通信回線の無料化は到底難しいだろう。何故ならこれらを実現しない限り、ビジネスに纏め上げることは難しいからだ。いくらAmazonがマーケットプレイスを持っていたとしても、これらのリスク判断ができなければ事業ではなく「賭け」になってしまう。つまりAmazonが今回提供したKindle Fireはそれだけ戦略性の高い、高い差異化性を持った製品であり、サービスなのだとみる。
但しこれが「モノ」から「コト」になるには、どういったエクスペリエンスを利用者(端末利用者、仕組みを利用してサービスを提供する事業者双方)に提供するかにかかっている。また何故ハードウェアまでセットに出さなくてはならなかったのか、既にユーザが所有するタブレットやスマートフォン上で動くアプリでは何故まずいのか。
その点は今後のKindle Fireの普及や評判、サービスによって徐々に出てくるのだろう。
今後の展開
Kindle Fireはタブレットの1つの利用形態を切り開くのではないかと考える。従ってこれで「勝負あった」ではなく、まさに今から新たな挑戦が始まるのだと思う。報道の中にはアジア系、日本系のAndroidタブレットメーカーに影響が出るのではというコメントも見られる。短期的にはKindle Fireが席巻したとしても、長期的には新たな時代の幕開けとなることを期待したい。
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