枝を伐って根を枯らすの最新の日記
ところが間もなく
斯様な斎藤先生の御不満が、正木先生の天才的頭脳と相俟って、当時の大学部内に、異常な波瀾を捲き起す機会が参りました。それは、ちょうど、私共が当大学を卒業致します時で、正木先生が卒業論文として『胎児の夢』と題する怪研究を発表されたのに、端を発したので御座いました」
「……胎児……胎児が夢を見るのですか」
と私は突然に頓狂な声を出した。それ程に胎児の夢[#「胎児の夢」に傍点]という言葉が、異様な響きを私の耳に与えたのであった……が……しかし若林博士は矢張りチットモ驚かなかった。私が驚くのが如何にも当然という風にうなずいた。手にした書類を一枚一枚、念入りに繰り拡げては、青白い眼で覗き込みながら……。
ヴォラーレ
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