熱気にほてった身体
ドラムスとパーカッションのリズムに合わせて、いやそれさえも無視してめちゃめちゃに足を踏み鳴らし、手をたたき、自分でも意味の分からないことを大声で叫び合う。
「あ、旗が……」
誰かの声が聞こえる。
見上げると、重力に反してそそり立った〈塔〉の、飛びこみ台のようなひさしの部分、もう真っ暗になった夜空に強力な二本のサーチライトの光の柱が交わるあたりに人影が動いている。
彼らは大きな黒い旗を振っている。風と、下にいる観客たちの熱気によって現れた一時的な上昇気流に乗って、真っ黒の旗が夜空にはためく。
今、もしかしたら「あいつ」が、黒い旗を振るあの男たちの中にいるんじゃないか……僕の頭に、ふとそんな考えがよぎる。
歌う男の顔は白い。いや、異常なぐらいに白すぎる。あれは白塗の化粧をしているに違いない。
男は上着のポケットから何か小さなものを取り出す。格子縞のスカーフを通して、それが一瞬光る。リズム・ギター群が一定の速度を刻むロックン・ロールの一瞬のすきを突くように男はそれを口元に運び、金切り声のような音を発する。ブルース・ハープ。
それを合図に、照明が変わる。青い光を縦糸に、橙色の光を横糸に縫い込んだレースのような照明。緑色の衣装の少女が長い裾を引いて前に進み出る。彼女は歌う男の横に立ち、ハープの音色に横笛で音を合わせ始める。少女の奏でる素朴な民謡のような旋律が、男の発する危険な金属音にからみ合い、優しくあおり立てる。と、さらに音を重ねながら、長い髪にバンダナを巻いた女性がその後ろで、エレクトリック・バイオリンを弾き始める。
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