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全英オープン(ゴルフ)

THE OPEN Championship St. Andrews 2010

全英オープンは、マスターズ、全米オープン、全米プロとならぶ4大メジャーの1つで、1860年から開催されているゴルフ界最古の歴史伝統を誇る大会。大会創設から150年目を向かえる今第139回大会は、7月15~18日の4日間にわたり、聖地セントアンドリュースのオールドコースで行われた。開催は、海辺に沿ったゴルフコースであるリンクス(links)で行われるのが通例となっており、聖地セントアンドリュースは5年に1回開催される。世界でゴルフを志す者にとって、全英オープンで優勝し優勝カップである「クラレット・ジャグ」を掴むこと、特にこの聖地セントアンドリュースのオールドコースで手にすることが“世界で最も歴史のある栄光”となっている。

日本人9人で決勝77人に残ったのは、石川遼谷口徹宮瀬博文。それぞれ4日間通算で-2の27位タイ、+3の60位タイ、+4の68位タイの成績となった。石川選手はスコア、順位ともに海外メジャー自己ベストの成績。2日目には老雄トム・ワトソンと共にラウンドし「自分にとって本当に宝物だ。一生忘れられない」と気持ちをいっぱいに涙ながらに語った。今回のメジャーを自分のゴルフにとって着実に糧にしていっている、バイキング精神をも併せ持つ、逞しい日本人の若手選手だ。

初夏の英国、スコットランドは、特に午後になると天気が変わりやすい。晴天かと思えば、突風が吹き、雲が起こって大粒の雨が降り出す。さらに、海辺に沿ったゴルフコースであるリンクス(links)コースは、そもそも海風が強く、近くに川があって風向きも強さも突然変わる。英国人が、歴史上、長年克服してきた過酷な「自然」があり、天気予報などでは予測不能に変化する。この大会に出場する栄誉を得たのは皆、世界で百選錬磨の男達だが、この変幻自在な「自然」、強風と突風、うねるフェアウェイ、そして脱出困難の深いバンカーと低木ヒースのあるラフに、いかに紳士の平常心をキープし、いかにバイキングの攻略心を沸き立て続けることができるか、まさに英国人の描く「人生」そのもののスポーツ大会だ。

これに対し、日本の「自然」も過酷だが、人間ではなく、むしろ「自然」の側に神が宿り、これを神に誓って人間が克服すべきものではなく、神を見方につけて鎮めるのが伝統的な「自然」で、これが日本人の描く「人生」なのかもしれない。がちな日本では、の中のゴルフ場も多く、有り谷ありで、バンカーも扇状地のようで、グリーンもどこかの頂上の平らかなデザインとなっており、そのてっぺんに目標とするカップがある場合が多い。聖地セントアンドリュースは、強風、うねるフェアウェイ、ヒースのあるラフでの「自然」と、うねりの中のグリーンとおもむろにあるカップ、大きなカップで一度投獄されたら最後出られない古城のようなバンカーという「人間」の成せる技が渾然となっており、バイキングの末裔である英国人が、大海原の「自然」と戦い、陸に近づけばライバルとなる「人間」と戦って、世界をものにしてきた歴史そのものとの印象を強くする。

今回、「クラレット・ジャグ」の栄光を掴んだのは、南ア出身のルイス・ウーストハウゼン。通算-16と2位と-7打差をつけてのメジャー初優勝だ。優勝を決めた瞬間、真っ先に赤ちゃんを抱いた奥さんがかけ寄り、夫の栄誉を祝福した。今はG20の一因としてアフリカ随一の成長を続ける南ア。これもかつての大英帝国の一部、英連邦の一部だった。今回、南ア出身選手では4回目の快挙となった。2位は-9でイングランドのリー・ウエストウッド、-8のローリー・マキロイ(北アイルランド)、ヘンリック・ステンソン(スウェーデン)、ポール・ケーシー(イングランド)の3人が3位タイとなった。タイガー・ウッズ(米国)は、天才の輝きを放つショットを何度が見せたものの、今回は-3の23位タイに終わった。

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