サッカーのサポーター(イタリア、デンマーク、日本)
(イタリア)
イタリアでは1898年からサッカーのプロ・リーグがあり、1929年からセリエAと呼ばれ、私の住んでいたローマでは、1927年創立のASローマ(Associazione Sportiva Roma 1927 S.p.A.) と1900年創立のSSラツィオ(Società Sportiva Lazio S.p.A.) がある。どちらかが対戦する試合の夜には、会場のオリンピック・スタジアム(Studio Olimpico)周辺は大渋滞となり、周りのBarやRistranteはサポーターで溢れ、皆、試合への闘志を漲らせていた。
イタリアでは、大の男が本気でサッカーを愛し、闘志を燃やすため、伝統的に「サッカー場は女子供の来るところではない」と言われている。英国のフーリガン以前から暴力事件やサッカー賭博(トトカルチョ/Toto Carcio(サッカーの意))の絡む八百長・疑獄事件などが起こっている。
例えば2007年2月のカターニャ対パレルモ戦。試合中にサポーター間で暴動が発生し、試合を中止したが場外乱闘に発展。爆弾を投げつけられた警察官1人が死亡、100人以上が負傷、15人の逮捕者を出す惨事となった。2005-2006シーズンの2006年5月、八百長疑獄疑惑が発覚。ユヴェントスほかが強制降格処分となり、主犯格とされたクラブ・オーナーや買収された審判ほか多くの関係者が処分された。カルチョ・スキャンダル(Calcio Scandal)、カルチョーポリ(Calciopoli=Calcio(サッカーの意)+Tangentopoli(疑獄事件の意)と呼ばれている。
(デンマーク)
今晩、日本時間の27:30に日本と対戦するデンマークのサポーターは、英国のフーリガンに対して「ローリガン」と呼ばれ、熱心に応援するが相手を傷つけ暴力に訴えることはないという意味で、デンマーク人はこれを誇りに思っている。以下、在日2年目、連日デンマークのユニフォームを着てテレビ等出演してお国の広報と両国の友好に努める、フランツ=ミカエル・スキョル・メルビン大使の4月26日のブログを引用させていただく。
1985年、コペンハーゲンの国立競技場で、デンマーク代表チームは翌年のワールドカップメキシコ大会に向け、強豪ソ連との予選に臨んでいた。そのほんの数日前、ベルギーのヘイゼル・スタジアムでイギリスのクラブチーム、リヴァプールFCのサポーターが暴徒化し、39人の死者が出るという悲劇のショックから、世界中のサッカーファンはまだ立ち直れずにいた。このソ連戦で、意外にもデンマークは若干18才の ミカエル・ラウドルップが2点をゴールし、4-2の伝説的な勝利を収めた。デンマークは国を挙げて喜びと興奮に酔いしれたが、その光景がベルギーでの惨事とあまりにもかけ離れていたため、デンマークの新聞BTはデンマーク・サポーターを表す「ローリガン」という言葉を作った。ローリガンは「静かな」という意味の単語「Rolig」と、それと真逆のフーリガンを掛け合わせた造語である。この言葉には、デンマーク・ファンは応援の熱意ではどこの国にも負けないが、決して暴力には訴えないという意味が込められている。
この言葉はデンマークで人気を呼び、1986年には公式のローリガン協会が設立された(現在も存在している)。今ではこの言葉が使われる頻度も減り、皮肉な意味合いも帯びているが、デンマーク代表チームのサポーターは誰しも、陽気で暴力と無縁なローリガンであることを誇りに思っているに違いない。
ローリガン協会のサイト:
http://www.roliganklubben.dk/
ビデオ:
http://www.ambtokyo.um.dk/ja/menu/2010FIFAWorldCup/
Video/Roligans/
(日本)
2010年6月14日に書いたように、12年前の1998年6月14日、日本が初めてワールドカップに参加したフランス大会の日本・ジャマイカ戦を観戦した。日本からのサポーターは1993年5月15日にJリーグが発足して5年経ち、日本の侍ブルーのユニフォームを着て、フェイス・ペイントをして、野球の調子で笛などの鳴り物応援を試みたり、太鼓を叩きながら「ニッポン! チャチャチャ」の応援スタイルを作ったり、ユニークな面もあるものの、スタジアムの雰囲気に溶け込んでいた。ついでに金髪、茶髪の若者も多く、フランス、イタリアの友達は「日本人が変わってしまったみたい」と髪の毛の色の変化にむしろ目を見張っていたのを覚えている。
日本でも、プロ野球で試合中ビール瓶を投げたり、喧嘩をしたり、場外で野球賭博があったり、とイタリアのサッカーのような、大の男の闘争心の賜物はある。しかし、日本人にとって「サポーター」と呼ばれてのサッカー応援は新参者。さらに外国での試合で、女性や子供のサポーターも多い。このため、デンマークのローリガンのように、和気藹々として他国のサポーターとも友好的な心地よい雰囲気で、皆で肩を組んで「君が代」を歌い、スタンド、ベンチの選手、スタジアムのサポーター、日本でのサポーター・視聴者の心が一つになって、日本と日本人の戦いを応援している瞬間は、日本人として誇らしく、満ち足りた気持ちでいっぱいになったことを覚えている。
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