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社内旅行・宴会

社内旅行宴会と言えば、十数年前までは日本式経営をメンテナンスする社内の一体感に不可欠なものだった。それが近年はめっきり少なくなったと言われている。

かつて終身雇用が保持されていた時代、会社の同僚は文字通り一生の同僚だった。こうした環境の下では、上司の飲みやゴルフの誘いは受けるに越したことはなく、優秀な部下とも常に意思疎通を図ることが最重要となる。家庭においても、これは家計を支える仕事の一環としての意味があり、家族もこれを心得ていた。

こうした仕事の一環を真面目にこなしてきたサラリーマンが、バブル崩壊、デフレ時代の下、倒産やリストラに遭い、終身雇用という大前提を失った。家庭を家計から支えてきた立場も危うくなり、離婚家族崩壊を招いた。再度、正規雇用を受けられたのは一握りの仕合わせな人々で、派遣切りを繰り返されたり、非正規雇用でさえ得られがたくなってきている。多くの日本人は、終身雇用という梯子を外されたと感じた。同時に、日本企業は勿論、日本政府もこれを前提とした制度設計を見直すことが急務となった。

こうした環境の変化の中、日本人の合理的な行動の一環として、社内旅行宴会はいったん影を潜めた。いつ首が切られるか分からない中、今の会社の同僚と付き合うより、将来の転職先となる他の会社や業種の人脈を広げ、あわよくばICTを駆使した「副業」でネット・ビジネスを起業し、「二足のわらじ」を履くことで初めて自らの「雇用保険」と出来る時代になってきている。

これはミクロの動きだが、マクロ経済的にも合理的な行動だ。世界の成長の中心が先進国から新興市場国にシフトする中、日本GDPは伸び悩む一方、急速な高齢化で国や個人の出費はかさむこととなり、一人当たりのGDPつまり収入は確実に減少していく。この中で雇用を維持するためには、1つの雇用機会を分け合うワーク・シェアリングを行うしかなく、個人の視点から見れば、「二足のわらじ」を履くことが合理的となる。

若ければ若いほど、ウェブ、メールやmixiを使って人脈を広げている。しかし、転職を重ねるにつれ、実は、何かの縁があって同じ会社にいる目の前の上司や同僚との人脈こそ、人脈の中では最も重要だということに気づき始めた若者が増え、こうした「重要」上司や同僚をさそった「社内旅行宴会」が見られ始めている。従来のように社内や課内の全員と一斉に行くのではなく、社内の「重要」人物と一緒に行く旅行や宴会という点で大きく異なっているが、目の前の人間との関係をまず考えなさい、というのが、太古から人間関係の基本らしい。

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