枝を伐って根を枯らすの最新の日記
深山の胸に横たわっている
深山に衝ッ突かるようなことはめずらしくもなかった。
深山は古い笹村の一閑張りの机などを持って、別の家へ入って行った。そこへ、この家を周旋した笹村の友達のT氏も、駒込の方の下宿から荷物を持ち込んで、共同生活をすることになった。そして、二人は飯を食いに、三度三度笹村の方へやって来た。
甥が着いたその晩に、家主のK―やT―、深山も一緒に来て、多勢持ち寄ったものを出し合って、滅多汁のようなものを拵えた。
台所には、すべてに無器用な婆さんを助けに、その娘のお銀という若い女も来て、買物をしたり、お汁の加減を見たりした。
「私あ甘うて……。」と、可愛らしい顔を赧くして、甥が眉根を顰めた。
「笹村君は、これでもう何年になるいな。」と、健啖家のT―は、肺病を患ってから、背骨の丸くなった背を一層丸くして、とめどもなく椀を替えながら苦笑した。彼は肺のために大学を休んでから、もう幾年にもなった。その時は、ちょうどいろいろな調査書類などを鞄につめて、一、二年視学をしていた小笠原島から帰ったばかりであった。
「作かね。」
大判プリント 格安
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