枝を伐って根を枯らすの最新の日記
阿呆鳥を釣る
小さな板のうえに、餌のついた釣針を乗せて、浪の上に流してやると、阿呆鳥は、それに食付いてくる。それを釣るのだ。
天気の好い日は、老博士も、死人のような生残者たちも、僕から釣道具を借りて、釣りに興ずるのだった。嵐のあとの晴れた朝だった。
大きなうねりに乗り、うねりに沈んで、方船は、木の葉のように漂うているとき、一人が、海洋の彼方を遠望しながら、とつぜん叫んだ。
「おお、……島だ。島だ」この声は、人々に活気を与えた。なるほど、水平線の彼方に、一点の黒影がうかんでいる。
「無人島かしら」僕は、好奇の眼を見はった。
「珊瑚礁だったら、つまらないなア」
誰かが、力ない声で呟いた。
「パーム・パームリック圏内に迷い込んだのではあるまいかな」これは、博士だった。
「パーム・パームリックというのは、何ですか」
「南海の魔の海だ。珊瑚礁が群生して、おまけに潮流の渦巻く、おそろしい死の海ともいわれるところじゃ」
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