枝を伐って根を枯らすの最新の日記
海底へ沈んでゆく
「ありがとう、ありがとう。わしは、きっと、生き抜いてみせる」
大浪がくるたびに、方船は、顛覆しそうになる。
嵐に吹きつけられて、方船はほとんど浪に没することさえあった。
何よりも苦痛なのは、暴風雨に見舞われることだ。天蓋のない建物の屋根の上に、わずかに取すがっている僕等だから、豪雨には徹底的に叩きつけられる。が、この豪雨は、また漂流者にとって天の恵みでもあった。屋根の窪みなどに、雨水が溜るからだ。僕等は、それによって、渇を医やすことができ、雨水を呑んで、わずかに飢えを凌ぐのだった。
ときには、晴れた、気持のよい日和もあった。海洋は浅みどりに輝き、浪もおだやかで、方船の動揺も殆どなかった。こういう時に、僕は自分のきているジャケツの毛糸を解き、その毛糸を幾本かあつめて撚糸にし、また、屋根板から一本の釘を抜取って、これを曲げて釣針をつくって釣りをした。
はじめ、餌の代りに、靴底の革を切って釣針につけて、海に投げてやると、またたくまに、一尾の大きな魚が釣れた。その魚の肉を餌にして、さらにカメアジや、鮫や、阿呆鳥を釣り上げた。
看護 受験 家庭教師
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