枝を伐って根を枯らすの最新の日記
机の抽斗を開けてみると
学校のノートらしいものは一つもなかった。その代りに手帳に吉原の楼の名や娼妓の名が列記されてあった。妾――仲居――などと楽書きしてあるのは、この場合お銀のこととしか思えなかった。
「ああいう団体のなかに捲き込まれちゃ、それこそお終いだぞ。呼び出しをかけられても、今後決して外出しない方がいい。」
笹村は甥を呼びつけていいつけたが、甥は疳性の目を伏せているばかりで、身にしみて聞いてもいなかった。そして表で口笛の呼出しがかかると、じきにずるりと脱けて行ってしまった。
「いつかの朝、顔を瘤だらけにして帰って来たでしょう、あの時吉原で、袋叩きに逢ったんですって……言ってくれるなと言ったから言いませんでしたがね。」お銀は笹村に言い告げた。
「その時も、あの連中につれられて行ったようですよ。あの中には、髭の生えた人なんかいるんですもの。それに新ちゃんは乱暴も乱暴なんです。喧嘩ッぱやいと来たら大変なもんですよ。国で、気に喰わない先生を取って投げたなんて言ってますよ。」
お銀は甥が、この近所で近ごろ評判になっていることを詳しく話した。
「だけど、なにしろ友達が悪いんですからね。あなたもあまり厳しく言うのはお休しなさいよ。おっかないから。」
笹村の小さい心臓は、この異腹の姉の愛児のことについても、少からず悩まされた。
「僕もあまりよいことはして見せていないからね。」笹村は苦笑した。
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