枝を伐って根を枯らす
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僕もあまりよいことはして見せていない

笹村は、寒い雨のぼそぼそ降る中を、腕車で谷中へ出かけて行った。この日ごろ、交友をおのずから避けるようにして来た笹村は、あの窪っためにある暗い穴のような家を、めったに出ることがなかった。これまで人の前でうつむいて物を言わなければならぬようなことのなかった笹村は、八方から遠寄せに押し寄せているような圧迫の決潰口とも見られる友人が、どんな風にこのことを切り出すか、それが不安でならなかった。深山と気脈の通じているらしく思えるこの俳友B―に対する軽い反抗心も、腕車に揺られる息苦しいような胸にかすかに波うっていた。
 ひっそりした二階の一室に通ると、B―は口元をにこにこしながら、じきに深山とのことを言い出した。しばらくB―は笹村の話に耳傾けていた。笹村は苦笑した。
「だって、十六やそこいらで、色気のある気遣いはないんですからね。」
 笹村はしばらく打ち絶えていた俳友の一人から、ある夕方ふと手紙を受け取った。少しお話したいこともあるから、手隙のおり来てくれないかという親展書であった。
 お銀は、体の工合が一層悪くなっていた。目が始終曇んで、手足も気懈そうであった。その晩も、近所の婦人科の医者へ行って診てもらうはずであったが、それすら億劫がって出遅れをしていた。
上尾に美容室を2店舗展開するカバーヘアーグループ

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