枝を伐って根を枯らす
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うつむいて物を言わなければならぬようなこと

女の話が出たとき、笹村は張り詰めたような心持で言い出した。
「その方がいさぎよいと思う。」
「それまでにする必要はないよ。」B―は微笑を目元に浮べて、「君の考えているほど、むつかしい問題じゃあるまいと思うがね。女さえ処分してしまえば、後は見やすいよ。人の噂も七十五日というからね。」
「どうだね、やるなら今のうちだよ。僕及ばずながら心配してみようじゃないか。」B―は促すように言った。
 笹村はこれまで誰にも守っていた沈黙の苦痛が、いくらか弛んで来たような気がした。そしていつにない安易を感じた。それで話が女の体の異常なことにまで及ぶと、そんなことを案外平気で打ち明けられるのが、不思議なようでもあり、惨ましい恥辱のようでもあった。
「へえ、そうかね。」帰りがけに、B―はそう言ってまた一ト銚子階下へいいつけた。
 幌を弾ねた笹村の腕車が、泥濘の深い町の入口を行き悩んでいた。空には暗く雨雲が垂れ下って、屋並みの低い町筋には、湯帰りの職人の姿などが見られた。
「今帰ったんですか。」
 腕車と擦れ違いに声をかけたのは、青ッぽい双子の着物を着たお銀であった。
「どうでした。」
「医者へ行ったかね。」
「え、行きました。そしたら、やはりそうなんですって。」
 腕車の上と下とで、こんな話が気忙しそうに取り交された。
 笹村が腕車から降りると、お銀もやがて後から入って来て、火鉢の方へ集まった。
上越の美容院

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