枝を伐って根を枯らす
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田舎廻りの手品師などがいる

一緒に来た美しい人達の姿もみえなかった。お島は隙を潰すために、若い桜の植えつけられた荒れた貧しい遊園地から、墓場までまわって見た。田舎爺の加持のお水を頂いて飲んでいるところだの、蝋燭のあがった多くの大師の像のある処の前に彳んでみたりした。木立の中には、海軍服を着た痩猿の綱渡などが、多くの人を集めていた。お島はそこにも暫く立とうとしたが、焦立つような気分が、長く足を止めさせなかった。
 休茶屋で、ラムネに渇いた咽喉や熱る体を癒しつつ、帰路についたのは、日がもう大分かげりかけてからであった。田圃に薄寒い風が吹いて、野末のここ彼処に、千住あたりの工場の煙が重く棚引いていた。疲れたお島の心は、取留のない物足りなさに掻乱されていた。
 旧のお茶屋へ還って往くと、酒に酔った青柳は、取ちらかった座敷の真中に、座蒲団を枕にして寝ていたが、おとらも赤い顔をして、小楊枝を使っていた。
「まあ可かったね。お前お腹がすいて歩けなかったろう」おとらはお愛相を言った。
「お前、お水を頂いて来たかい」
「ええ、どっさり頂いて来ました」
 お島はそうした嘘を吐くことに何の悲しみも感じなかった。
 おとらはお島に御飯を食べさせると、脱いで傍に畳んであった羽織を自分に着たり、青柳に着せたりして、やがて其処を引揚げたが、町へ帰り着く頃には、もうすっかり日がくれて蛙の声が静な野中に聞え、人家には灯が点されていた。
ワクワクメール

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